うづめとパブロヲの春らんまん
「うづめー!パブロヲー!初めてのお花見、おめっとー!」
新品の赤いギンガムチェックのレジャーシートの上に、はらはらと薄ピンク色の桜の花びらが舞い降りてくる。
昨日の春の嵐に耐えた満開の桜のもと、オラたち、オハナ(家族)みんなに囲まれて、歓迎してもらってるの。
「ほう、これが花見ってやつなのな。思わずお絵描きしたくなる景色だねぇ。」
「ふふ、さすが、パブロヲ。芸術家だねぇ。」
「フフン!オラは巨匠パブロ・ピカソから名前をいただいたのだもの、そのうち筆を持てるようになるさ。」
どうも、こんにちわーに。オッス!オラ、ハシビロコウのパブロヲ!
ブログでおしゃべりするのはお初かもしれないね。オトモダチのみなさん、どうぞよろしくね。
オラがこのボブ家にやってきたのは今年の2月中旬のこと。隣りにいるスズメのうづめは去年の11月。ということは、オラたちはふたりとも、春という季節を迎えるのが初めてなんだ。
「なぁなぁ、オラ、ちょっと遊んできていいか?」
「あら!パブロヲチュン、ワタシも一緒に行きたいチュン!」
「いいよー。あ、そうそう。新たに導入したココに入っていってよ。そしたら安全でしょ?」
リンくんはそう言って、オラたちを生成りでできたUFOみたいなものに乗せた。
「見て見て、てんとう虫柄の日よけハットなんだけどね、ホラ、みんなが入るのにちょっといいでしょ?」
リンくんいわく、今年のお花見のために、ヨーロッパからトラが飛んでやってきたというお店(フライングタイガーコペンハーゲンってところだ)で、このてんとう虫ハットとさっきのレジャーシートを買ったらしいよ。
「こんな感じ?」
うづめと一緒にハットのなかに収まってみせると、リンくんはニコッとうれしそうに笑った。
「うんうん、似合ってる。」
みどりキャンプ場(我が家が暮らす団地のことだ)から裏手に出たところにある公園には、地元のニンゲンたちがちらりほらりとお花見をしているんだ。オラたちはその間をぬって、桜の木に登って遊んだり、リンくんに記念撮影をしてもらったりした。
「エンチョぉエンチョぉ、エンチョも遊ぼーよー!」
ケンイツエンチョーも一緒にやってきてるけれど、ずぅっとスマホを見ているんだよ。オラ、エンチョーのこと好きだから、エンチョーに遊んでほしいんだけどなぁ。
「おぉーパブロヲごめんごめん。エンチョーいまカイシャのひとから連絡来ちゃってさ、返信してるとこ。ごめんな。」
「そっかーぁ。じゃぁ、オラ、ここ入るぅ!」
バッサバッサ!
オラは翼を広げて数メートル離れたエンチョーが首を下に向けてスマホで文字を打っているその後ろにまわりこんで、上着のフードのなかに飛び込んだ。
「ぬぉ!パブロヲ、いいところ入ったな!」
「オラ、ここがイチバン好き!」
オラがエンチョーのフードで遊んでいたら、うづめもソッコーでやってきた。
チュンチュンチュンチュン!
「ワタシもエンチュンのフードに入るチュン!えへっ!」
そう。なにせ、オラたちは鳥さん。鳥さんは羽根があって飛べるのだから、あんな小さなてんとう虫ハットは不要だよ。自由に気ままに、木からまた別の木へと、そして、エンチョーのフードのなかにも、入ることができるのだもの。
(アッ・・・。気がついちゃった、我が家の”チーム鳥さん”のうち、勘九郎だけはペンギンさんだから飛べなかった。まぁ、でもその代わり泳ぎが得意だけどな。)
オラ、このおうちに来て、たくさんのオハナに囲まれて、初めて春を迎えて、とってもうれしいんだなぁ。
あぁ、オラの人生(ハシビロコウ生)、春らんまんだなぁ。
「パブロヲチュン!うづめも春らんまんだチュン!」
ふとレジャーシートの方をみると、ライオンのボブ家三兄弟やすずフクコンビがのんびりと空を見上げていた。
オハナみんなで、春らんまん。
そうだな。そろそろ、みんなの絵を描いてみたいものだな。
パブロヲ