カミキリムシとおにぎりデート

「でへっ!おで、これ、大好きー!いっただきまぁす!」

もっぐもっぐもっぐもっぐ
もっぐもっぐもっぐもっぐ

ぐびっぐびっぐびっぐびっ
ぷはぁー

ふぅ。

“もっぐもっぐもっぐもっぐ”

ライオンのボブぞです。

今日はねー、あのね、リンくんがカミキリムシ・・・否、髪を切りに出かけるというから、なぁんとなくついてきたの。

昼の12時すぎのこと。

「ボブぞ、わたし、カミキリムシに行くけど?」

「なにそれ、おでについてきてほしいの?」

「ふふっ、なんだかお出かけしたそうな顔してたから、声かけてみたんだよぉ。」

「なんだなんだ、ンー。ルミぞうと一緒なら考えてやってもいいけど?」

「いいよ。カメラも持っていこうか。」

ルミぞうとは、おでの最近の愛機、ルミックスのことだ。

「あで?リンくん昼飯食わないの?」

「あー、うーん。予約が13時でしょ、で、あのニーさん切るのめっちゃ早いから30分くらいで終わるとして、そこまでガマンできる?」

「ガマンもなにも、もう時間ないじゃん。」

「あ、そうなんですー。だから、終わってから食べよ?」

「うむ。うむうむ。」

みどりキャンプ場(我が家)から歩いてピッタシ30分くらいのところに、その美容院はある。どこの駅からもあまり近くない。どこの駅からもあまり近くない我が家から、どこの駅からもあまり近くない美容院まで、30℃超えの曇り空の下を歩く。リンくんの汗がじんわりと伝わってくる。
おではというと、リンくんの黒いリュックの中で、ルミぞうのゴツゴツとしたその硬い筐体に当たらないようにカラダをねじまげながら耐えている。

リンくんの髪型はここ数年ずっとショートカットだ、と言おうとして、あ、間違えてたことに気がつく。
コロナっちゃんが流行ってキンキュージタイセンゲンとか外出を控えるようにみたいな時期は、美容院もサボっておうちにひきこもっていたからだ。その間に、気がついたら肩先を超えるまでにリンくんの剛毛が成長したのだった。

きみのかみがーかたまでのびてーぼくとおなじになったら・・・♪
おでが、バリカンで刈ってあげるよぉ!

そんなリンくん。文字通り1年以上ずっと放置して、そして、その後はバリカンでセルフ刈りしたり、前髪を超オンザ眉にぶった切ったりして遊んでいたのだった。

紆余曲折を経て、ようやくここ1年くらいは、また美容院に通うようになっている。

それもこれも、この美容院のローカルさと気安さにハマってしまったからだという。

チリンチリン・・・

「こんにちわー。」

「あ、どーも。いらっしゃいませ。どうぞ。」

リンくんはおでの入った黒いリュックをイスの上に置いて、ソッコーでシャンプー台へ行ってしまった。

「・・・お。。。おでは?」

「ボブぞは切らないでしょ、ちょっと待っててね。」

小声でリンくんがおでに話しかける。

そんなだから、おでは暇だなぁって、リュックの隙間から店内を見回してみる。

建物の外観は、どう見てもニンゲンの住む一軒家だ。ただ、普通の玄関とは別にガラス張りのドアがあって、それが店の入口になっている。住宅地のなかの、自宅の1階の一部屋を美容院にしている、そういうタイプのローカルな店だ。

わっしゃわっしゃっわっしゃわっしゃ
しゃこしゃこしゃこしゃこ

ジャァァァァァァァァっ

あ。シャンプー、ソッコーで終了。髪を切りに来たといってももともとまだまだベリーショートの域だから、一瞬で終わった。

「今日、どぉします?」

「ウーバーイーツのCM見るたびに、夏木マリばりに刈り上げたいっていう欲にかられてまして。あ、まぁそこまではやらないんですけど。」

「あっは。じゃぁ、前回よりも短くいっちゃいますか。」

「はーい。おねしゃす。」

うぃーんうぃーんうぃーんうぃーん

軽くリンくんが注文をすると、すぐにバリカンの音がする。

とにかく、無駄がなく手早い。この美容師のニーさん、まったく躊躇がないのだ。

うぃーんうぃーんうぃーんうぃーん

横と後ろをザザッと刈り上げてから、ハサミに持ち替えてシャコシャコと切ってゆく。

なぜか黙りこくる、美容師のニーさんと、リンくん。
店内には髪を切る音だけが響く。なにせ、家。BGMなんていうシャレたものはない。

しばらくずぅっと無言。

「あっ・・・スミマセン、僕、刈り上げするとき、集中しすぎちゃって。」

「あー、全然いいですいいです。植木になったキモチを味わってました。剪定的な。」

カミキリムシ、今度は植木になったらしい。
リンくんのアタマは随分とサッパリしてきたようだ。おでの角度からだとあまりちゃんとは見えないのだけど、足元にばっさばっさとリンくんの剛毛の切れ端が落ちていっているからだ。

うぃーんうぃーんうぃーんうぃーん
シャコシャコシャコシャコ

しばらくまた無言が続くと、その後。

「一回流しますか。」

ジャァァァァァァッ

ピチャピチャピチャピチャ
ワッサワッサワッサワッサ

タオルドライもそこそこに、年季の入ったドライヤーの強風の音がする。

ゴォォォォォォォッ

「・・・ボブぞ、あとちょっとだからねー。」

リンくんからのテレパシーばりの小声が届いた。ドライヤーの音にかき消されて、美容師のニーさんには聞こえないと思ったらしい。

おでは、意外と飽きずにこの目の前の髪切りの光景を眺めていることができた。

・・・パンッ!
わっしわっしわっしわっし

最後、ワックスで仕上げてもらってるようだ。

「これだけ軽くなると立ちますねぇー!」

リンくんが弾んだ声で感想を言っている。

「あー、伸びてくるとね、立たないですもんね。」

合わせ鏡でぐるっと後ろを見て、どうやら気に入ったらしい。

「わースッキリー!ありがとうございました!」

「ありがとうございましたー。」

リンくんがおでのところまで、戻ってきた。ゴソゴソ、スマホを出して、お会計する。

(・・・ぴぇいぴぇい♪)

超ローカルな自宅美容院のわりに、といっては怒られてしまうかもしれないけれど、Paypayで払えるあたりもいいのだという。

「あれ、空模様が微妙ですかね?ありがとうございましたー!お気をつけて。」

「はーい、どうもー。また。」

ドアのベルをまたチリンチリンと鳴らして、おでらは退店したのだった。

時は13時半。ちょうどぴったり、30分。
30分歩いて来て、30分でシャンプーからカウンセリング、ドライにセットまで、フルサービス終了。

「ねねね、ボブぞ、どぉかな?どぉかな?ボブぞのタテガミよりもわたしのほうが短いよ!」

「あ、ホントだぁ、おでの方が長いね!フハッ!」

「気に入ったー。これで真夏を乗り越えるぞー。」

「首の後ろジョリジョリ青いぞ?いいのか?」

「いいんだってば。どうせ1-2週間したら伸びてくるんだから。」

グゥゥゥゥ・・・

「なぁ。おで、ハラヘッタ。」

「うん、わたしも、お腹すいた。」

グゥゥゥゥゥゥゥゥゥ・・・

近くのミニストップに寄る。
ミニストップは、コンビニおにぎりのなかでおでのお気に入りのひとつだ。特に、店内炊き上げおにぎりシリーズの、「炭火焼鶏めし」があったらサイコーなのだけど。

「あ・・・あぁぁぁぁったぁ!!!」

「リンくん、でかした!」

近所の公園のベンチで、もぐもぐ。

いろんなおいしいものや楽しいことは好きだけど、おで、お外でおにぎり食べるの、キライじゃないぞ。

「うふん、ボブぞとおにぎりデートできるなんて、うれしい。」

「む・・・!デートじゃないもん。」

「えーっデートじゃん。公園デート。いいでしょ?」

・・・良くないっ!

でも、おにぎりおいしいの。一緒に食べると、おいしいの。

カミキリムシとおにぎりデート。

なんだかおで、リンくんのお出かけにくっついてきて、ちょっとおもしろいイチニチだったの。

「あれ?そういえば、せっかく一緒に来たのに、ルミぞう、今日触ってないなぁ・・・。」

そう思っておでがもう一口おにぎりをほおばろうとしたら、リンくんがルミぞうを構えておでのことを撮っていたのだった。

カシャッ

でへっ!

ボブぞ

“おでの大好きな「炭火焼鶏めし」おにぎり”

※Rin注: ミニストップの公式ホームページには「炭火焼鶏めし」載ってなかった(2023.7.14現在)
でも他の味もおいしいの!
↓↓↓
ミニストップ 店内加工おにぎり
https://www.ministop.co.jp/syohin/onigiri/

「砂かぶりのピクニック」
https://bobingreen.com/2022/11/08/2964/

「お日さまの下でおにぎりを食べる」
https://bobingreen.com/2023/04/26/4692/

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吉田拓郎「結婚しようよ」
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Rin(リン)

ぬいぐるみブロガー、Rin(リン)です。 ライオンのボブ家と愉快な仲間たち、そしてニンゲンのケンイツ園長と一緒に、みどりキャンプ場で暮らしています。 ボブ家の日常を、彼らの視点でつづっていきます。

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