バラの香りの絆
朝から、横殴りの大雨だった。
どうにもならないこんなイチニチをどう過ごそうか?と低空飛行しながら遅めの昼ごはんを食べ終わる頃、思ってたよりも早く雨が止んだことに気が付いた。
湿気の多い日は、テラスへの出入り口の窓ガラスの建てつけがすこぶる悪くなる。リンが、両手でガ・・・ガララッと力を込めて開けて、目の前の道路が乾き始めていることを確認したのちに、わたくしに話しかけてきた。
ボブこ、チャンス!!!じゃない?バラ園までお散歩行こう。
え!行くー!🎵やったーぁ。
急いでたてがみとお洋服のシワを整えて、リンのリュックに入った。
夕方5時のチャイムがなる頃、入り口に到着。続いて、町内放送が聞こえる。子供たちは・・・家に帰りましょう・・・・、この季節はまだまだ明るいから、もうちょっと遊べるんじゃないかしら?なんて思ってしまう。私たちがこれから閉園前のバラ園に入ろうとしようとしているように。
受付で、例のパスポートを見せて入場する。
門を潜り抜けてみると、客は周りには数組しかおらず、明日の早朝開園に向けてメンテナンスをする係員の方が圧倒的に多い。
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ホゥ・・・ホケキョ。
ピィーヨ、ピィーヨ。
チュン。チュン。
鳥たちのさまざまなさえずりに交じって、バラ園の機械的ではありつつもロマンティックなメロディの環境音楽が聴こえている。こんなにも咲き誇るバラたちや花の中で過ごす、雨あがりの夕方。このバラ園は、わたくしの大好きで大切な花園よ。
ゆったりと歩む。
心なしか色がくっきりはっきり美しく見えるのはなぜだろう。
水滴のついたバラたちは、いつも以上に華やいで芳醇な香りを漂わせている。
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普段は人が多すぎてなかなか座ることのできないベンチを、独り占めしてみた。
美しく優雅な時間が流れる。
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歩みを進めて木々に近づいていく。遠景で見ているとわからなかったのだけれど、バラの花は盛りを少し過ぎて、茶色くなりつつ花弁を地面に落としていた。その代わりに、あじさいの花が少し色づき始め、池の端には蓮の蕾がいまにも開きそうな姿で雨の季節を待ちわびている。
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あっという間に閉園の時間が迫ってきて、奥まったオールドローズの庭からエントランスの方へと、わたちたちは急ぎ気味に戻った。
ボブこ、帰ったら今夜はおうちバル遊びしよう。
リンに話しかけられて、そうね、わたくし、生春巻きがいいな、と答えた。
OK。じゃあエビさん探しに行こうか。春雨はなしで、いつもの、もやしでいいよね?パクチーはいっぱいあるから。
随分と陽が傾いてきたとはいえ、6時を過ぎているのにまだ明るい。
中学生たちの帰り路を私たちは逆行しながら、スーパーへ向かう。ワンちゃんの散歩もちらほらと。朝のお散歩、できなかったものね。すれ違う人もワンちゃんも、みな柔らかい表情をしている。
リンとわたくしは、言葉を少なに交わしながら、同じ景色を眺めて同じ家に向かう。肩を並べて、といいたいところだけれど、わたくしとリンとじゃぁ背の高さが全然違うものだから、わたくしはリンの腕に抱かれている。
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わたしたちは、オハナだし、トモダチだ。ニンゲンのトモダチを作るのがニガテなリンのために、わたくしは寄り添ったり元気づけたりすることを忘れないように心掛けている。リンはわたくしに甘えることはしないし、わたくしがリンに甘えることもしないけれど、わたしたちは心地よい距離感と安堵感を共有しているの。
雨上がりのバラの香りは、そんな気持ちを、少しだけ増してくれているような、そんな気がした。
たぶんそれは、わたくしとリンとの絆だ。
わたしたちは、きっとまた一緒にこの道を歩いていくの。
夕暮れの帰り道、ここちよし🎵
ボブこ
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