雨雲のゆくえ
海!!!
ねぇ!海が見えるよ。
ボブお、はしゃぎすぎて落ちないでよー?あと、鳥のフンいっぱい落ちてるから、踏まないでよね?
リンくん、おれの心配はいらないよ。もうすっかりおニーさんライオンだぜ?任せろって!
むしろおれはリンくんのほうが心配だよ。鳥のうこ💩踏むなよー?フハッ!
あ、こんにちわーに!ボブおです。
“ボブ家の方舟”、目的地にトーチャク!チーバは内房の、金谷ってところだよ。
いまおれがいるここは、今夜お世話になるホヨージョの展望デッキだ。エンチョーが急遽予約してくれた、ケンポの施設の中にある。チーバの名所のひとつである鋸山のふもとにある宿泊施設で、正直なところもう結構年季は入ってきてるし、いうなればまぁちょっとした研修所みたいなところなのだけれども。ケンポの施設だからとってもお得にお泊まりさせてもらえるらしい。しかもね、地の利からか夕食のおさかなが抜群においしくってね。おさかな大好きライオンのおれとしては、実はお気に入りのスポットなのだ。
ついさっきまでいた市原パーキングでは、大きな雨粒に襲われたのだけど、ここまでくる間に、おれらの愛車モビスケの猛ダッシュで雨雲を蹴散らしてきた。
そのおかげで、ここに到着した瞬間には青空が気持ちよく出ていたのだけれども、ぼーんやり海を眺めている間に、あっという間に、どーんより曇り空に変わってきた。むしろ、いまにも黒い雨雲がやってきて、おれらを飲み込んでしまいそうな思い湿気を感じる。
そうそう。ひとつ言っておきたいのだけれどね、おれは雨が嫌いなわけじゃない。むしろ、雨の景色は、風情があって好きなほうだ。しかもおれは、ニッポンの6月生まれ、つまり、梅雨生まれなんだよ(今月だよ!フハッ!)。だからなのかなぁ、しっとりとね、アジサイが美しく色づくさまを観察するのなんかも、好きだ。
雨は決して嫌いじゃないんだけれども、でもね・・・。おれ、たてがみが濡れるのはとってもニガテだ。さらに言えば、カミナリさまの爆音ライブは、大のニガテだ・・・。雨と言っても、ゲリラ豪雨みたいなのは、おれにとっては本当に恐怖なのだ。
最近、安定しないこの空の機嫌を損ねないように、おれは距離感を保ちながら過ごしてるってわけ。とにもかくにも、雨が降ってきたら安全な室内に入って、窓ガラス越しにゆっくりと眺めていたい。それだけだ。
ぐっと首を伸ばして空を見上げる。青い部分がだんだんと白に変わり、白い部分はだんだんと灰色になる。めまぐるしく空の色が変わる様子は、アジサイの花のグラデーションにも似てるなぁなんて、ぼんやり思う。
そして、目の前、いや、目の下には、港。金谷港だ。アジフライで有名な黄金アジをはじめとして、東京湾のおいしいおさかながいっぱい集まってくるらしい。
もう午後3時過ぎだから、もちろん漁船はいない。白に赤いラインの入った、フェリーがちょうど出航した。久里浜まで行くんだね。のんびりと見送る。
遠くにはタンカーも見える。どんな荷物を積んで、どこへ行くのだろうか?
スゥー。・・・フゥ。
ひとつ、大きく深呼吸してみた。
おれは、眺めのいい場所が好きだ。
我が家のみどりテラスからの景色もなかなか好きだけれど、やはり海というのは物珍しいし、とっても気分がいいね。それだけでも、ここに連れてきてもらえてよかったなって、うれしくなる。
不意に、知らない声がおれに向けられた。低い、オジサンの声だ。
コンニチワー!
おおお・・・・!コ、コンニチワー!
わちゃわちゃとはしゃぎながらリンくんと写真を撮っていたら、通りがかりの庭掃除のオジサンにコンニチワーされたのだった。
その後も、三人組のオジサンにコンニチワー三連星を受けた。インフラ工事っぽい三人組だ。
コンニチワー。
コンニチワー。
コンニチワー。
おおう、通るたびにコンニチワーされる。ちょっと小っ恥ずかしいおれだけれど。でも、おニーさんライオンだから、ちゃんとご挨拶を返すよ。
・・・コンニチワー!
ご挨拶は大切だものね。
ピィッピィッ。
ピィーーーーィッ。
聴き覚えのある鳴き声。ヒヨドリだ。ま、言っても我が家と同じ、チーバだものね。
ドゥピィユドゥピィユピィルルル。
こっちは聴いたことないなぁ。なんの鳥かな?
そんなこんなで展望デッキで遊んでいたら、ついに、やつがやって来た。
あっ。やばい。ポッ、きた。
ポッ。ポッ。ポッ。ポッ。
ポツポツポツポツ。ポツポツポツポツ。
うぉぉぉぉ!にげろー!
ねぇねぇ、早く、チェックイン、しよ?お部屋入ろう?
そうしよう。そうしよう。
雨雲さん、どうか、カミナリさまは連れてこないでください。おれらが全員無事にお部屋に入るまで、ちょっとだけ、ちょっとだけ、待っててね。
ボブ家の方舟御一行様、お部屋まで大移動開始だよー!
ボブお