リンくん「絵を描く」! 第8回 — “Ctrl+Z”のない世界

「ぬおーーー!やり直しっ!」
大苦戦中のリンくん。
今日は下絵だけでもう1時間も経ってる。今から色塗って、晩ゴハンまでに描き終えられるのかなぁ?そもそも、晩ゴハン、作ってくれるのかな?
オトモダチのみなさーん、おっす!オラ、パブロヲ!
リンくんの「絵を描く」企画、第8回をお送りするぞ。
NHK Eテレの番組、「3か月でマスターする 絵を描く」に沿って、アクリル絵の具絵を練習中のリンくん。今回の課題は、街並みを描くんだって。ほう?はてさて、どんな絵ができるのかな?
第8回 街並みは目の高さで変わる!
「しょ・・・ショウシツテン?」
オラは絵描きさんだけれど、理論ってものはよくわからない。この第8回課題では、柴崎春道先生が、「消失点」という技法について講義してくれてるの。
「えーっと、聞いたことはあるんだな・・・。目の高さ=水平線。その線よりもまず対象物が上にあるか下にあるかで変わってきて・・・その対象物をどの角度から見るか・・・。あうー。ン・・・?」
わかったような、わからないような曖昧な反応を示しているリンくん。
「うがー。理論はわからん。けど、コレをマスターすると、すごいカッコよく遠近感のある絵が描けるってわけでしょ?はー・・・ふーむ。」
「リンくん、ダイジョブ?アタマから湯気出てるぞ?」
オラが突っ込むと、リンくんは開き直ったような表情で、エンピツを手に持った。
「ま。描いてみるべさ。」
ドコの方言か(チーバ弁か?)わからない語尾をつけて、意を決した様子。真っ白な画用紙の前で、スイスイと手を動かし始めた。
・・・10分経過。
あ、消しゴムで全部消した。
・・・20分経過。
あ、また消しゴム持ってる。
・・・30分経過。
いいところまで描いたのに、全部消した。
「うっわうわうわ、難しいコレ。建物の遠近感、道幅、木の根元の位置、サイズ感・・・。あとこの道標とか・・・。いやいやいや。」
ブツブツ言ってる。まぁ、しばらく見守ってみようか。
・・・60分経過。
不安げな顔してるけれど、どうやら、下絵は完成したらしい。

「ンー。テキストに先生の見本があるから、それを見て描いたようなもんだけど。とりあえず、コレで塗ってみますだ。」
また変な語尾をつけて喋ってる。どうやらうちのリンくん、絵を描き始めると、変なコトバ遣いになるっぽい。本人曰く、脳の思考回路に別のスイッチが入る感じがするらしいぞ。面白いね。
パレットに絵の具をニョロニョロと出してゆく。
前回で白を1本使い切ったから、新しい白を開ける。なんだかキモチがいい瞬間だ。

手順によれば、まずは空を塗り、それからビルを描く。
ビルには日が当たっている部分と暗い部分があるから、それを塗り分けていく。
「日向は淡いベージュ」、ってテキストには書かれているけれど、正直、淡いベージュって何色を混ぜて作るんだっけ・・・?
パレットの上での色づくりのひとつひとつが想像であり創造であり、ほんのちょっとの加減で変わるというおもしろさがある。筆にどれくらい水を含ませるのかによっても、紙の上での色の乗り方が変わる。
うちのリンくんは、デジタル(ペンタブレット)で絵を描くこともあるけれど、アナログ絵の”Ctrl+Z”のない世界*はたまらなく面白いらしい。(”Ctrl+Z”とはパソコン上での作業をやり直すためのコマンドキー)まぁ、もう、何が正解かはわからないけれども、やってみるしかない、とにかく紙の上に乗せてみる、という思い切りの良さが必要なのだ。
「はー・・・!クルマ、むっず!なになに?『四角い箱をイメージして』って、えー・・・イメージはしたけれど・・・位置がおかしいな・・・。」
納得いかない様子のリンくん。えぇいっ!と紙の上で、”Ctrl+Z”した。つまり、道路のアスファルトの色の絵の具を失敗したクルマの上に塗り重ねて潰し、それが乾いてから、もう一度描き直すというチャレンジを繰り返した。
このクルマの表現はすずちゃん(番組ナビゲーターの山之内すずちゃん)もかなり苦戦していたから、当然といえば当然なのかもしれない。こういうのをサラッと描けるようになると、すごく楽しいんだろうなぁ。
「おー。リンくんは木を描くのはいい感じだね?」
奥の部屋でテレワークをしていたケンイツエンチョーが飲み物を手にしながら、リンくんの手元に一瞥をくれていった。
「あはっ!アリガトー。うーん。街路樹の雰囲気は悪くないんだけどねぇ・・・。道路が難しすぎるのよ。」
「んまー、がんばれ。」
「あ、でもそろそろ晩ゴハンの買い物、行く?」
「あ、いや、まー集中してんでしょ。いいよいいよ。」
「おっけー。んじゃ、勢いもあるしできるとこまでやってみるだ。」
ケンイツエンチョーもオラも、もうリンくんの満足行くまで終わりを待つしかなかっただ。・・・あ、オラも変な語尾、うつっちゃっただ!アハッ!
「はぁーっ!最後、もうひといき!」
アルフォートをひとつ口に放り込み、グイッとコーヒーを飲むと、その後のリンくんは、黙々と画用紙に向かい続けた。
花壇を描き入れて、人物も描き入れた。柴崎先生のお手本では、人物は男女カップルっぽい雰囲気だったけれど、リンくんは女性二人組にしたらしい。赤いドレスを着た華やかな女性と、ブラックコーデでキメたクールビューティーな女性・・・、のように見える。
それから最後、影を描き入れたりして細かいタッチを加え、リンくんが筆を置いたのは午後6時半過ぎのことだった。下絵を描き始めてから、約5時間。よくもまぁ集中して描きあげたものだと思う。
「おぉー・・・おつかれさんでした!」
オラが話しかけると、リンくんはもうぐったりした様子で呆けていた。

「よっし。完成。」
そうして出来上がった作品が、コチラです。

「テキストに載っているお手本よりも随分と鮮やかさが強いね。真夏の日差しの強さを感じるね。樹木に当たる陽の光のキラキラした感じが出てる。」
「あーうーん。。。アリガト。でもさー、よく見てみたら、横断歩道の角度間違ってた・・・!あぁ・・・直したい!でも・・・今更、描き直さないけどさ、むーん、残念!」
アララ。リンくん、”Ctrl+Z”したい箇所、見つけちゃったみたい。
本来だったら道路の中央線と同じ角度で横断歩道の白線が走ってるはずなのに、横断歩道が変な方向(手前)に歪んじゃってるの。空間をねじ曲げちゃったんだねぇ。アハッ!


「ハァ・・・。ホント・・・。まぁまぁ、そこそこ描けたつもりだったけど、一度離れて見てみたら、雑なところがそのまま放置されてるね。クルマの色も日陰になてるわりには鮮やかすぎるしね。」
そっか。まー、いいじゃない。精進しろよな!リン画伯!
オラはゲージュツガクブ(芸術学部)部長として、ちゃんと見守っててやるからさ。なっ?
「あ。リンくん、大事なひとこと、忘れてるよ?」
「あ。そうだった。」
せーのっ・・・
「絵は、楽しーいっ!」
後日譚。
居間の片隅で、乾かしがてら壁に立てかけていたこの絵を見たケンイツエンチョーが、リンくんになんとリクエスト。
「なぁなぁリンくん。これさーあ、もうちっと慣れてきたらさ、ビートルズのアビイ・ロードのジャケットみたいな、うちのオハナたちが横断歩道を歩いて渡ってる絵、描いてほしいなー。ボブおがリーダーで先頭でさっ。どーぉ?」
「おっおっおあっ・・・!いやー。。。うん、そうだねー、そういうの描けたら、面白いよねぇ・・・!しっかしまだまだハードル高すぎるよ。」
「うん、いつか。そのうちで。」
いいなー!我がボブ家のオハナがビートルズみたいに横断歩道を渡ってる絵。
その時はオラも混ぜてくれよなーっ!ね?
今回もよく頑張りました!
第8回、目の高さを学ぶ街並みの絵、おつかれさまでしたーっ。
残りはあと4回。
リンくん「絵を描く」!の挑戦を引き続き応援してねー!
以上、ゲージュツガクブ(芸術学部)部長、ハシビロコウのパブロヲでしたっ!
まったねー!
パブロヲ

▼3か月でマスターする 絵を描く Eテレ 番組ホームページ▼
https://www.nhk.jp/p/3months-ewokaku/ts/XK15MY1YJG/
▼テキストはコチラ▼
▼番組で講師を務めていた 柴崎春道 先生 公式ホームページ▼
https://www.watercolorbyshibasaki.com
▼リンくん「絵を描く」!アーカイブはコチラ▼
「リンくん『絵を描く』!(第1回 & 第2回)」
https://bobingreen.com/2025/04/28/13524/
「リンくん『絵を描く』!(第3回)」
https://bobingreen.com/2025/05/12/13675/
「リンくん『絵を描く』!(第4回 & 第5回)」
https://bobingreen.com/2025/06/13/14188/
「リンくん『絵を描く』!(第6回)」
https://bobingreen.com/2025/06/17/14302/
「リンくん『絵を描く』!第7回 — “ウモー”と”イッキュー”」
https://bobingreen.com/2025/07/08/14709/
▼パブロヲの名前の由来のお話はコチラ▼
「命名パブロヲ – 『コート・ダジュール』に憧れて」
https://bobingreen.com/2024/02/22/8316/