桜色の風と “THE PEEL(ザ・ピール)”でカンパイ
プシュッ・・・!シュぅー
軽い金属音のあとで、プルタブから炭酸がもれる音がする。
こーこーちーよぉしー!ここちよし、ここちよし♪
こーこーちーよぉしー!ここちよし、ここちよし♪
「あ、ボブぞ、その歌懐かしいねぇ。ボブぞが赤ちゃんの頃、よく歌ってたよねー。こーこーちーよーし!ってね。」
「む。うん。そだねー。つい、はなうた出ちゃった。アハッ!」
リンくんにそう言われて、おで、なんだかちょっと恥ずかしくなってしまった。心地いいとき、気持ちがいいとき、気分がいいとき用の、リンくん作詞・作曲の、謎の歌。リンくんの謎の歌はいくつもあるんだけどね、これは相当初期の頃からある歌で、おでは、生まれてすぐの頃から聞かされてきたんだ。
だから、おでも気がつくと、ついつい口ずさんじゃう。
こーこーちーよぉしー!ここちよし、ここちよし♪
こーこーちーよぉしー!ここちよし、ここちよし♪
ライオンのボブぞです。
おでは今ね、リンくんと一緒に、満開をとうに過ぎた桜並木の川べりで縁石に腰をかけて風を感じているの。暑くもなくて寒くもなくて、すごく風が強いわけじゃなくて、でも、ときおり、桜吹雪が舞い散るくらいの、絶好のお花見日和なの。
リンくんってば、右手にはオムぞう(カメラ)、左手には缶チューハイで、おいおい、どっちかにしてよね?このカメラは、おでが、オムぞう、と名付けた。OM SYSTEMというメーカーのカメラだから、OM=「オム」。「ぞう」、はおでの名前、ボブ三(ぞう)のぞうからとってやったのさ。
「んもーリンくん、オムぞう持ってるときはお酒飲まないっていったじゃん。代わりにおでが飲んでやるよ!」
「あっ!今日はねぇお花見だから特別だよぉ、ひとくちだけだよぉ。」
「ダーメっ!ごっべごっべごっべごっべ・・・!」
「アッハハ!ボブぞ、豪快な飲みっぷり!」
「ぷはぁ!あれ?コレ、めっちゃうまいのなぁ!」
「え?新製品の大泉洋の宣伝のやつ買ってみた。甘くないってやつ。“THE PEEL(ザ・ピール)”って言って、レモンの皮で作ったチューハイらしいよ。」
「フーン。おで、コレ、好きよ。リンくんも味見だけよ、味見だけなら飲んでいーよ。」
「アリガトぉ。んじゃっ・・・。」
ゴクッゴクッ・・・!
「うわぁ!リンくんそれ味見じゃないー!」
「うふふ。アラ、おいしいのねぇ。これまで我が家、缶チューハイナンバーワンは本搾りだったけど、コレもありだね。」
「おう。だろぉ?」
「あ、なるほどなるほど。ウォッカベースで、糖類添加してなくって、度数は5%。甘くないのに酸っぱすぎなくて、いいね。確かに、我が家が好きなわけだぁ。本搾りもだいたい近いけど、レモン味はえづくぐらいドライで酸っぱいもんね。」
ごっきゅごっきゅっ・・・!
おではリンくんの代わりにいっぱい飲んでやるの。あいつ、大事な大事なオムぞうを持って、もし万が一川っぺりですっ転んだら大変だからな。
「ボブぞもおニーさんになったもんだねぇ・・・。」
リンくんがつぶやく。
「あ?そりゃそうさぁ。おニーさんだもの。今年もう10才になるんだもん。」
「そうかぁ。こうやって一緒にお花見デートしてくれて、うれしいなぁ。」
「デートじゃないもん、御目付役(おめつけやく)だもん。リンくんが転んだりチョーシ悪くならないように、見張ってんの。」
「ふふ。そんなぁ。わたしと一緒に海老川の桜、見に来たかったんでしょ。」
「むん。そんなことないも・・・」
おでがそう言いかけたとき。
ブワぁぁぁぁぁぁっ!と大きく木が揺れた。そして、その瞬間、柔らかな桜色の風がカタチとなって、おでの鼻先をかすめながら、川下から川上へと吹き上げていった。
「うひゃぁぁぁァ!」
リンくんが驚いてとっさにカメラのレンズを向けてシャッターを切り続ける。
「うひゃぁぁぁァ!」
おでは、こそばゆいこそばゆいになって、ぶえっくしゅんと大きなクシャミをする。
「おで、まじビビったぁ!桜色の風が急に襲ってくるんだもん、たてがみがぐっちゃんぐっちゃんだよぉ。」
「ナチュラルでカッコいいからダイジョブよ。」
「フン。おではいつだってカッコいいもんな。」
「そうそう。カッコいいから安心して。」
「うむ。うむ。」
おではそう言って、クピリ、と缶をかたむけた。
その後は、遊歩道沿いを市場の方へ向かって川下へと歩いていく。あちこちからいい匂いをさせている屋台と、それに群がるニンゲンたちを横目に、“THE PEEL”を片手にのんびりと花見の雰囲気を楽しんだ。どーせリンくんは屋台のゴハンは食べないって知ってるから、おでは空っぽのおなかに、せめても、ほろ苦くてシュワッと爽やかなレモンソーダ・・・あいや、レモンサワーを流し込んだのだった。
ゴール地点となる大通りまで川沿いを約2kmを歩き切ると、空模様はかなり怪しくなってきた。いつ雨粒が落ちてきてもおかしくない。
「ボブぞ、空、やばいね。さっさと用事済ませてお買い物して帰ろう。」
「うん。」
「でも、ボブぞと一緒にお花見デートできて、うれしかったよ。」
「おう。良かったな。ってデートじゃねーけどなっ!」
「あ、ソレ、まだ残ってる?」
リンくんがおでの手元を見ながら聞いてくる。
「んあ、あるよ。飲む?あ。その前にカメラちゃんとしまえよな。」
「オッケー。しまうから、ひとくちくぅださい。」
そうやっておでとリンくんは、今年も一本のレモンサワーをちびちびと分け合いながら、この海老川でのお花見を楽しんだのだった。
「いい日だったなァ!」
おでがそうつぶやいたその瞬間。
ポツリ、とおでのおでこに冷たいものがあたった。
「駅まで、ダァァァァッシュするぜ!リンくん、転ぶなよー!」
「おわぁぁぁ待ってぇ!ボブぞー!」
相変わらずどんくせーリンくんだけど、しょうがねーから手つないで引っ張ってやることにした。
「いっそげー!でも転ぶなー!」
「いやーんボブぞ優しい・・・!」
ポツッポツッ・・・
雨雲は容赦なくおれらの頭上を覆い、春らしいむぅっとしたほこりっぽい匂いがあちらこちらで沸き立っていた。おでらはうひゃあとかうひょぉとか言いながら、駆け足で桜の花びらの吹き溜まりを蹴り上げながら、帰路へとついたのだった。
ボブぞ
▼サントリー THE PEEL公式サイトはコチラ▼
SUNTORY “THE PEEL” ザ・ピール 果皮でつくったサワー
https://www.suntory.co.jp/rtd/thepeel
▼海老川について▼
海老川流域情報サイト
https://ebigawa-mizujunkan.jp/
▼過去の海老川でのお花見のお話はコチラ▼
「雨上がりの桜歩き」
https://bobingreen.com/2024/04/07/8862/
「すずフクのお花見納め」
https://bobingreen.com/2023/04/07/4463/