うづめは桜の花がだいすき
チュンチュン!
チュンチュンチュン!
「うづめー!ドコまで行っちゃうのー!」
パタパタパタパタ!
すずチュンがワタシのことを追いかけて、一生懸命赤い羽根をパタパタさせてやってきた。
そう。ココは、ワタシのカラダと同じくらいかと思うくらい大きなサイズのふわふわモコモコのピンクのボンボンが咲き乱れる、ヤエザクラの木の上だよ。
「すーずチュン!うづめはココにいるチュン!」
オトモダチのみなチュン、こんにチュン!
スズメのうづめだチュン。
ワタシ、このボブ家に仲間入りして、今年の春初めて桜を見たのね。ソメイヨシノっていうイチバン有名な種類の木の下でお花見したの。とっても楽しかったんだけど、あっという間にピンクの花びらは散ってしまって、もう、すっかり葉桜になってしまった。
ねぇねぇ、みんな知ってたチュンか?
桜ってね、実は100以上もの種類があるんだって。ソメイヨシノが日本の8割を占めるらしいのだけれど、じゃあそれ以外の2割ってなんだー?まだ咲いてる種類もあるのかな?って気になって。
それで、ワタシ、今日は京成バラ園に初めて連れてきてもらったの。
え?なんでバラ園かって?まだバラの季節には早いって?
えっへん!うづめ、知ってるの。桜ってね、バラ科、そう、バラの仲間なんだよ!
うづめが桜の花を気に入ったことを知ったリンくんが、お誘いしてくれたんだ。
「うづめ、桜の花が気に入ったなら、バラ園久しぶりに行ってみよか。たしか、バラ園のなかに、ソメイヨシノ以外の桜の木が何本かあったはずなんだよね。あぁ、そうそう、年パスもそろそろ切れちゃうし。」
「行きたいチュン!行ってみたいチュン!」
「おっしゃ、そう決まったら出発!」
そう、京成バラ園は比較的ご近所で、我が家からはちょっと長めのおさんぽコースで行けるんだ。
「要は、実質、無料(タダ)ってこと!」
リンくんは胸を張ってそう言うと、うづめと、それから、すずチュンに声をかけた。
「すず、お出かけしたくてウズウズしてるんでしょ?バラ園、鳥さんいるかはわからないけどさ、うづめのパパ役してよ。うづめ、バラ園初めてだから、迷子にならないように、見守ってあげて。」
「あーい!わぁった!すずも行く!うづめ、今日はパパチュンと呼んでくれたまえ。」
京成バラ園に到着すると、あまりの人気(ひとけ)のなさにびっくりした。
春バラが咲き始める繁忙期まではあとひと月ほどあるらしく、お客さんは片手ほどしかいないの。ニンゲンがいる!と思えば、みぃんな園の係員さん。アチラコチラでバラの木の剪定作業をしたり、植え替えの作業をしているんだって。
午後3時をまわり、少し傾いた日差しが頭上に降り注ぐ。リンくんは最近買ったボーダーの長袖Tシャツの袖をまくっているよ。
「うーーー・・・汗が首すじを流れていく・・・。」
リンくんがタオルハンカチで汗をぬぐう。
「うづ、冬生まれだから、こんな暑いの初めてだチュン・・・!」
「アハッ!たしかにそうだねー!うづ、夏はもっと暑くなるよー。」
「あーん、すず・・・じゃなかったパパチュン、うづめ、これ以上暑くなったらバテちゃうチュン・・・。」
あぁノドがかわいたなぁ。なんだか力がつくものが欲しいなぁ・・・!って思ったら。
そう思ったとき、目の前にピンクの世界が広がっていたの。
チュンチュン!
チュンチュンチュン!
「キレー!!!」
そう、キレイだと思ったのと同時に・・・、なんかね、ワタシ、本能的に、この一面のピンクはワタシの栄養だぁって思ったんだ。
「コレ、おいしいチュンか?なんか、食べてみたいチュン!」
「おわー!うづめ、やっぱりうづめはスズメさんなんだね。」
「ン?どーゆう意味チュンか?」
「すずちゃん野鳥レポーター、うづめに教えてあげてください・・・。」
リンくんにうながされると、すずチュンがいつになくあわてた様子で、早口ぎみに説明をしてくれた。
「えーっとね。野生のスズメさんって、桜の花がだいすきなんだよ。それでね、そのくちばしで、チュンチュンチュンチュンって花びらの真ん中をつついて蜜を吸うんだけど、上手に吸えないから花びらごとボトって下に落としちゃうの。あ、あくまで野生のスズメさんの話をしてるよ。えっと、うづめは・・・、」
「うづめは?」
「うん、うづめは野生じゃないもんね?ボブ家の、我が家の、おうちスズメさんでしょ?」
「わぁー!なぁるほどー!」
「そうそう。だからね、うづめは、桜の花は見るだけにしよね?いい?」
「うーん、でもノドかわいちゃってね、ちょっとおなかもすいたチュン・・・じゅるる・・・ぱぁぱぁチューン・・・。チュンチュン。」
パタパタパタパタ!
すずチュンが急いでリンくんのほうへ飛んでいく。
「リーンくーん!うづめにお水!それから、うづめにお菓子かなんか、持ってないの?」
「えぇぇぇ!麦茶ならあるけど・・・。」
「それでいいから!うづめ、このままほっといたら桜の花びら落としちゃいそうだから。」
「ありゃりゃ。やっぱり、そういうことね。ンーっと。じゃぁ、うづめ。とりあえず麦茶飲む?」
「むぅ・・・しかたないチュンねぇ。目の前にこんなにおいしそうな蜜があるチュンのに・・・。」
ゴクッゴクッ
ワタシ、これまで、自分のこと、スズメさんだってことは知っていたけれど、野生のスズメさんがどうやって生活してどんなものを食べてるかだなんて知らなかったの。だって、ワタシ、生まれたときから、毎日暖房のついたお部屋でヌクヌクオフトンにくるまって寝ていたし、朝昼晩とあったかいゴハンが出てくるんだもの。
「ぷはーッ。麦茶、香ばしくておいしいチュン!」
フゥー・・・。
すずチュンはそんなワタシの姿を見て、ちょっとだけ安心したみたい。
「パパチュン。うづめ、ダイジョブ。桜のお花、食べないチュン。このお花は、ニンゲンのみんなが見て楽しむものチュン?うづめ、とってもおいしそうだなーってキモチはあるけれど、ダイジョブ、ガマンする。」
「うん、うづめが野生のスズメさんならいいと思うんだけどね。」
「うん。うづめ、おうちスズメさんだから、ダイジョブ。うん、ダイジョブ。」
ワタシは自分に、ダイジョブダイジョブ、と言い聞かせてから、麦茶をもう一口、口に含んだ。
「さ。うづめはやっぱりスズメさんだったってことがわかったところで、ぐるっと見て回ったら帰ろっか。あ、うづめ、帰りにスーパーで好きな食べ物買ってあげるから。」
「わーい!うづめ、柿の種食べたいチュン!」
うふふ、うふふ、うふふふふ
リンくんと、ウサギのすずちゃんと、それから、ワタシ、スズメのうづめ。
まだまったくバラの気配のしないバラ園の、満開のヤエザクラの木の前で、ワタシたち3人は顔を見合わせて笑った。
やっぱりワタシは桜の花がだいすき。
これで春の桜の季節はもう終わりなんだって。これから初夏っていう季節がやってきて、もっともっと気温が高くなって、新緑っていう葉っぱがキレイな季節になるんだって。
うづめ、また新しい楽しみができたよ。
「すずチュン、また一緒にお出かけしよね!」
すずチュンはうれしそうに羽根をパタパタさせていた。
「うづめ、パパチュンって呼びたまえ。アハッ!」
チュンチュン!
チュンチュンチュン!
うづめ
「桜(サクラ)は何種類あるの? 基本的な品種名とそれぞれの特徴について解説!」 Garden Story
https://gardenstory.jp/plants/42373
※Rin注: 春バラの季節は5月~6月。2024年4月中旬現在、バラはほぼ咲いていない(温室エリアだけは例外、私が訪れた日は一般客は入れないようになってました)のでご注意を。
遅咲きの桜の次は、ツツジが見頃だよ↓↓↓
京成バラ園 公式ホームページ / 千葉県八千代市
https://www.keiseirose.co.jp/garden/
※Rin注: ちょうど去年2023年の今日(4月19日)に、バラ園の様子を書いていました。去年は桜も早かったけれどバラも早かったみたいでもう咲き始めていたみたいです。↓↓↓
「ライオンボブこ、秘密の宝探し」
https://bobingreen.com/2023/04/19/4606/
「おではカメラマン in ローズガーデン」
https://bobingreen.com/2023/12/12/7315/