午後5時11分、やっちと見上げる空
「午後5時11分になりました。さぁ、西の空はどうでしょうか・・・?」
司会のおネーさんが現在時刻をお知らせすると、会場にいるみんなが一斉に、でもため息まじりに、西の空のほうを向いた。
はうーん?
あぁ・・・30分くらい前までは遠くになめらかな稜線がうっすら見えていたのにね、今は何も見えなくなっちゃったんだ。
ライオンのボブおです。
今日はね、ユア・エルッムゥー♪でおなじみ(Bayfmリスナーじゃないとわからないよね、マニアックすぎてゴメン)、チーバは八千代市、京成電鉄八千代台駅直結のショッピングモール、ユアエルムの屋上にやってきてるんだ。
2024年2月14日スイヨービ、今日はバレンタインデー。八千代市の主催で、毎年バレンタインデーの日に、このユアエルム屋上から富士山を眺めるというイベントが開催されているの。
しかもね、ただの富士山じゃないの。ダイヤモンド富士っていってね、富士山の頂上に沈みゆく夕日が重なるっていう幻想的な光景が、まさにこのバレンタインデーの前後数日間に、このユアエルムの屋上から見られるんだってさ。
我がボブ家は去年に続き2度目の参加。去年はねぇ、すんごい寒い日で、吹きすさぶ北風に負けじと観察したけれど雲がかかって見られなかったんだ。
(※去年のお話はコチラ → 「やっちのハートと北風小僧の空」)
そして、今年。去年と打って変わってものすごく暖かいバレンタインデーで、最高気温がなんと2月なのに17℃近くまで上がった。開場した午後4時過ぎ、8階建ての立体駐車場の屋上階に出ても、まったく寒さを感じることはなかった。おれは弟のボブぞとふたりでお気に入りのドラゴン柄のスカジャンを来てきたけれど、正直ちょっと汗ばむくらいだ。そんなだから、おれらを抱っこするリンくんはすでにじっとりとしていて、麦茶をぐびりとやっている。
気合いを入れて開場とほぼ同時に来てみたけど、イベントの開始まではまだ45分ほどある。屋上に上がるとすでに人が集まり始めていた。ホントのカメラマンたちは三脚を持参して、専用のコーナー内ですでに陣取り合戦を始めている。うちのリンくんは三脚は持っていないから、全然カンケーないけど。とりあえず柵にいちばん近いポジションは取って、それから、動作確認とばかりに何枚か西の空に向けてシャッターを切った。
カシャッ
カシャッ
「うーん。富士山、たしかあの辺に見えるはずなんだけど。多分、あのでっかいマンションの奥の、ふもとの稜線だけ見えてる、あそこらへん。」
「ドコドコ?」
おれとボブぞがカメラをのぞき込むと、ほんの若干、キモチだけ、山のふもとが見えるような見えないような・・・といったモワッとした景色が写っていた。
「ンー、わかりにくいねぇ。」
イベント開始まであと15分ほどに迫った4時半頃。それでもまだそのときには希望はあったんだ。
富士山の上空のあたりを見ると、全体的には灰色の雲がおおっているのだけれど、うっすらとした切れ間からお日さまの光がもれてきているんだ。そのオレンジ色のボンヤリのなかを小さく飛行機が飛んでいるのが見えた。
すぐ右隣にいたご夫婦もスマホのカメラをめちゃくちゃに拡大しながら、同じことをしゃべっていた。
(オイ、ココだよなぁ!たしか、ココのはずなんだよな。ンー。微妙だなぁ!上の雲、晴れてくれねぇかなぁ!なぁ!)
よくよくやり取りを聞いていると、マダムのほうはさほど乗り気ではなくいまにも買い物に戻りたいらしいムードを出していて、一方オジサマのほうが積極的に見たがっている様子だ。とはいっても、バレンタインデーにふたりで買い物に来てわざわざ屋上で寄り添ってダイヤモンド富士山を見ようと言うのだから、仲良しぶりがほほえましかった。
(こちらが一昨年のダイヤモンド富士の姿ですぅー!あちらのマンションの奥あたりです。)
市の職員さんだろうか、ギラッギラに赤く染まった富士山の写真を引き伸ばしたパネルを手に、開場に集まったニンゲンたちに向かって説明をしてくれている。
イベント開催時刻がいよいよ迫ってくると、どんどんとエレベーターからニンゲンたちが流れ込んできた。ベビーカーを押したママさんたち、制服を着た幼稚園帰りのちびっこたちも目立つ。子ども向けに配られている風船アートをカラダに身につけては、友達同志でうわぁあきゃぁぁぁとはしゃぎまわっているの。
そう、この「ダイヤモンド富士でバレンタイン」というイベントには、八千代市公式キャラクターの”やっち”がやってくるんだ!ちびっこたちに混じって、実はおれらも半分は”やっち”目的だったりもしてね。
やっちはね、ブルーグリーンのまぁるまるとしたカラダがカワイイんだ。黄色いくちばしがあって、大きな羽根があって、見た目はふくろうっぽいんだけどねぇ、「鳥でも猫でもない新種のいきもの」の男の子なんだって。あ、そうそう、猫じゃないんだけれど、猫耳もあるの。好きなお花はバラでお散歩が好きなんだって。ホラ、おれらと一緒だね!
「あ。そろそろ始まるみたい。」
マイクを持った司会のおネーさんがステージの横に立ったのを見て、おれらも持ち場を離れて一旦ステージ前へと移動した。せっかく開場と同時に取った場所だったけれど、すでに雲が分厚くお日さまの光は弱々しくなってしまっていた。
「うーん、ダイヤモンド富士は望み薄いから、やっち撮りにいこ!」
おれらはステージ前でしゃがみこんで、幼稚園の子たちに混じってやっちの登場を待った。八千代市長ハットリさんによるイベント開催のごあいさつ、それからダイヤモンド富士とはなんぞや、の説明の後に、ついにやってきた。
「やっちぃー!」
ピョコピョコと歩いてステージに登場したやっちは、やっぱりかわいいの!
まぁるまるとした白いおなかを揺らして、観衆みんなの撮影に合わせていっぱいポーズを取ってくれたよ。
「おわー!やっち来た!来た!なぁなぁ一緒に写真撮ろうぜ!」
「はいはーい。ボブお、ボブぞ、コッチ向いて。いっくよー。」
カシャッカシャッ
動き回るやっちをバックに、おれらはリンくんに何枚も写真を撮ってもらったよ。
ダイヤモンド富士の予定時刻5時11分をまわった空を見上げると、やっぱり一面の青鼠色のままだった。やっちの背中越しに見える光の兆しは、残念ながら富士山を明るく照らすことはなかった。
おれらは、うっすらと影だけをみせるスカイツリーにバイバイして、それから、やっちに別れを告げた。
「バイバーイ!また来年、来るからね!」
あぁ、今年も、ダイヤモンド富士は見られなかった。
残念だったけれど、でもね、大好きなカワイイやっちと一緒に、バレンタインデーの空を見上げることができて、楽しかったよ。
続々とエレベーターホールに吸い込まれていくニンゲンたちを避けて、おれらは階段でショッピングモールの売り場まで戻ることにした。
「さぁて、晩ごはん買って帰ろっかね。」
「うんっ!」
おれらは1階まで降りて、混み合う夕方の食品売り場へと向かったのだった。
ありがとうやっち!また来年会おうね!
次こそ、ダイヤモンド富士、一緒に見ようね!
ボブお
※Rin注: 2024年のイベントは終わりました。また来年も開催されるかな?
「ダイヤモンド富士でバレンタイン」イベント 千葉県八千代市 公式ホームページ
https://www.city.yachiyo.lg.jp/site/kankou/42748.html
やっちのプロフィール
https://www.city.yachiyo.lg.jp/site/yacchi-jouhoukyoku/1341.html