秋空とくらげ
ばるばるばるばる・・・
ばるばるばるばる・・・
夕方の時間に聞こえるのはちょっと珍しい。
まさかの、ばるばる音と夕方5時の防災チャイムのダブルブッキング。
てーんててーん てーんててーん
てーんててーんててーん・・・・・
ごじに・・・なりました・・・・
こどもたちは・・・おうちに・・・かえりましょう・・・・
思わずみどりテラスに出てみると、何本もの絵筆や刷毛でランダムに描いたような筋雲が目の前に広がっていた。
美しい、秋の空だ。
おでは、テラスの手すりから落ちないようにとリンくんにギュっと抱きかかえられて、身を乗り出して頭上を眺める。
と思えば、ばるばる音がどんどん大きくなって、おでの右手前をかすめるようにして通過していった。耳を覆いたくなるほどの轟音が、我が家の窓ガラスを震わせるのだ。
ガタガタガタガタ・・・
バリバリバリバリ・・・!!!
すると同時に、まるで音響装置でクロスフェードするように、ばるばる音は少しずつ少しずつ小さくなっていく。
ばるばるばるばる・・・
ばばばばばばば・・・
ば・・ば・・ば・・ば・・
目を凝らしてその姿を追っていると、その音の主は、突如として、くらげを産み落としていくのだ。
美しい、秋の空に、小さな傘が開く。
ひとつ
ふたつ
みっつ
よっつ
いつつ
むっつ
ななつ
くらげの七つ子が生まれた。
秒針を数えるかのように、等しい間隔で、ぱらり、ぱらり、と続く。
空中に産み出されたあとはというと、それぞれの子供たちは、ゆらり、ふわり、とそれぞれのペースで地上へと降りていくのだった。
おでは、最後の子が林の影に隠れるまで見送ってから、フゥ、とひとつ息を吐いた。
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今日はこの後、何機飛んでくるんだろなーぁ・・・?
初めての頃は、あまりに珍しくて最後の一機が行ってしまうまで、ずぅっと見ていられた。
今となれば、さほどのことでもなくて、みどりテラスのひとつの景色でしかない。
夕方5時のチャイムはとっくに終わっていた。
こどもたちは・・・おうちに・・・かえりましょう・・・
おでらも、お部屋にはいりましょう。
ボブぞ
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