ライオンの読書の秋
ボブおです。
秋深まり、夕暮れの風がヒンヤリしてきた。今日はちょっと小雨もパラついて、まだ半袖姿のおれは、ブルっとして、ワフッとひとつくしゃみをした。それをみた弟のボブ三は、おでもニーちゃんと一緒にくしゃみするー、ワフッ、とおれの真似をして、こっちを見てニーッと笑った。
ここはみどりキャンプ。ボブ家。平和な場所で、大切なオハナと一緒に、ゆっくりと、やわらかく、あたたかな日々を過ごしている。
おれは、オハナのリーダーであり、我が家をまもる、まもり神だ。おれの兄弟のライオンのボブ子とボブ三、いろんなところから旅をしてきて、今このみどりキャンプでひとところに暮らす、オハナ(家族)たち、そして、おれをこの家に連れて来てくれたケンイツと、その相方のリンくんとを、まもるシゴトだ。
実際にはおれが神さまなのではなくて、ヤオヨロズの神さまにおつかえをして、パンパンッてするんだ。そうして、神さま、ありがとうございます、おれはこのオハナをまもります、って約束する。それが、おれの役割。
おれがうまれて間もなくして、神社に行ったんだ。ケンイツやリンくんがするように、おれも、マネして、パンパンッってしてみた。
そうしたら、気持ちがすぅっとなった。
それが、おれと神さまとのつながりのはじまり。
その後、いろいろな神社に行って、いろいろな神さまがいることを知って、自分がとってもとってもとっても、とってもとってもとっても小さな、ものすごく小さな、ひとりのライオンだってことに気が付いた。
だから、小さなライオンなりに、自分の周りにいる、大切なオハナのことをまもろうって、心に決めてる。
おれはよく空を見上げる。空を見上げると、いろんな声が聞こえる気がするんだ。日の光を浴びて、アマテラスさんのことをおもう。
おれ、アマテラスさんのこと、知りたい。
読書の秋ってやつなんだってさ。神さまのお話を読んでみたいってリンくんに言ったら、リンくん、図書館で、本を借りてきた。
『古事記』
う、超難しいやつじゃん?
ううん、これはね、子供が読むようにやさしく書いてくれてるからきっと大丈夫。アマテラスさんとか、神さまのこと、勉強しよう。
うん。おれ、次にお伊勢さんへ行ってアマテラスさんにご挨拶できる日が来るまでに、もうちょっとアマテラスさんのこと知ろうと思う。
あ。サルタヒコさんも出てきたよ、ねぇねぇ、ボブお、サルタヒコさんはサルじゃないんだねぇ、神さまなんだって。
あーいやー、おれはわかってたよ、サルタヒコさんは神さまだよぉ。リンくんは、ほんっとに・・・、まったく。
とらっ、うまっ、いぬー!だもんね。みちひらき、してもらってるよ。
そうやって、おれらはたくさんの神さまにまもられて、暮らしている。そのことに、ありがとうございます、パンパンッてするんだ。
ニッポンの神さま、おもしろだぞ。リンくん、またほかの本も借りてきてー。読書の秋、しよっぜ。
次、いつお伊勢さんいけるかなぁ・・・。その日を楽しみに、おれ、精進します。
ボブお
橋本治 『少年少女古典文学館 第一巻 古事記』 講談社 1993
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