豆かんカンカンカカーン!
カンカンカカーン!勘九郎のスイーツターイム!
待ってましたよ!ちゃんとやって参りました、ごほうびスイーツターイム!
「リンくんのことだからBELZが定休日だった時点で、今日はスイーツなしね、とか言うのかと思ったけど?」
わっしがそう言うと、リンくんは失礼な!とかなんとか言いながらメニューのページをめくった。
バスクチーズケーキの専門店BELZ(広尾本店)が定休日だったので、とりあえず、恵比寿で軽ぅくスープだけおなかに入れてから、有楽町へ移動してきたわっしとリンくん。
東京交通会館!宮城のアンテナショップで笹かまを買い込んでーの、さぁて?え?おうち帰るの?ずんだソフトクリームくらい食わせてくれよ?なんなら北海道のショップもあるよ?スイーツいっぱいよ!と思っていたら、地下の路地にある間口の小さな店の前で立ち止まった。
「あ、そんなに並んでないね。入ってみよっか?」
リンくんはそう言うと、「甘 おかめ」と書かれた茶色い暖簾の下から続く列の最後尾についた。わっしたちの前には3組ほどが待っているが、その間にも退店するお客さんもいて、どうやら回転は早いみたい。
「リンくん!老舗の甘味やさんじゃん!こんないい店、入ってくれるの?」
「えー、だってさ、勘九郎がせっかくお供してくれたじゃない。朝からさ、健康診断とクスリの受け取りと、病院2軒と薬局と、ハシゴしてくれたでしょ?お礼だよ、お礼。」
「わーん!わっし来た甲斐があったってもんよ!カンカンカカーン!」
わっしもメニューを眺めようと思ったけれど、リンくんはもう決めちゃったらしい。
店前のショーケースには甘いのに加えてお食事のサンプルも並べられている。あんみつ、クリームあんみつ、おはぎにところてん…うどんやおでんまで。ザ、甘味処といったラインナップだ。
「おひとりさま…と、ペンギンさんですね。」と言われたかどうかは知らないが、列に並ぶこと正味10分ほど。わっしらはあっという間に席に通された。
温かいほうじ茶とお手ふきが置かれ、注文を聞かれる。
「豆かん、お願いします。」
リンくん、豆かんだって?!
渋っ!!!甘いのと甘くないののかなり甘くない寄りのやつ。黒蜜の甘さだけで食べるオトナなやつ。
「おわー、そこいったかぁ!クリームあんみつとかさ、白玉ぜんざいとかさ、そういうヤツいくのかと思ったよ?」
わっしがリンくんにそう言うと、どうやら顔色でわかってしまったらしい。
「うん、ゴメン勘九郎。勘九郎は甘いのが好きだからホントはコッテコテのが良かったんだろうけど。わたしは豆かんくらいがちょうどいいのよ。いまずっしりするやつ食べちゃって晩ごはんに響いたら、おうちでお留守番してるメンバーにも悪いでしょ?」
フン。なかなか一理あることを言いおる。そうだよなぁ、みんな、おうちでわっしらの帰りを待ってるんだもんな。おなかいっぱいで帰ったら、さみしがるよね。
それにしてもわっし、そんなにも恨めしそうな表情、したかしら…。そんなに顔に出てたとは不覚だカン。
「お待たせしました。豆かんでございます。」
ものの1分もたたないうちに提供された豆かんは涼やかな硝子の器で供された。美しくも懐かしさを感じる見た目だ。
小さな片口に注がれて黒蜜が添えられている。とろーぉりと、少ぉしずつ、豆かんにかけてもらうの。
ではさっそく…
「いっただっきまぁす!」
半透明の角がたった寒天。赤茶色のまぁるいえんどう豆。そして濃厚な黒蜜。甘くてちょっとしょっぱくて、コリコリして口の中でほどけて、お豆はホクホクして皮の繊維が心地よくて。
こんなにもシンプルなスイーツ…いや甘味は久しぶりかもしれない。派手さは一切ないけれど、昔から愛されてるんだろうなぁと感じる。
しかもテイクアウトじゃなくて、店内で温かなほうじ茶とともにいただく贅沢なひととき。
たった10分ほどで食べ終えちゃったけれど、とても満足感のあるスイーツタイムだったよ。罪悪感はないくせに、お口とココロは喜んでるの。
「カンカンカカーン!豆かんカンカンカカーン!おいしかったカン!」
ごちそうさまでした、カーン!
勘九郎
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