すずちゃんの野鳥にびっくりでSHOW – 第11回 冬の手賀沼でオハヨォゴザイマァスーっ
チュン!チュン!チュンチュン!
鳥さんの声で目が覚めて、パチッ・・・と目を開けてみると、いつもの寝室よりもずっと暗いことに気がついた。真っ黒いシェードを貼り付けた窓のすき間からスゥっと明るい光が差し込んできた。
「ン?あれ?ココ、ドコだっけ?」
「チュン!チュン!チュンチュン!すずチュン!おはーチュン!」
「あ。なぁんだー!鳥さんの声がすると思ったら、うづめだったんだね。うづ、おはーに!」
「チュン!おはーチュン!」
あ。そうだった!昨日の夜は、ボブ家の方舟、愛車のモビスケのなかでみんなで車中泊したんだった。寝床のハンモックでは、スズメのうづめがはしゃいでいるよ。うづめはスズメ生(人生)初めてのお出かけなんだもんね。ホンモノのスズメさんを一緒に見に行こうねって、手賀沼のほとりに来たのだった。
さぁーてさてさてっ。
オトモダチのみなさん、(小声)オハヨォゴザイマァスーっ。
ウサギのすずこと、野鳥レポーターの鈴之助です。
さーぁやってきましたっ。今日は、すずちゃんのぉぉぉぉぉぉっ、野鳥にびっくりでSHOWぉぉぉぉぉっ!
第11回は、冬の手賀沼でオハヨォゴザイマァスーっだよ。
すずが野鳥レポートを始めたのは、今年の春、3月頃のことなんだ。だから冬場の野鳥観察はまだ経験していなくてね、今日はいよいよ大好きな手賀沼で挑戦してみるよ!
ちなみに一般的には野鳥観察のシーズンは冬っていわれることがあってね、それは、木々から葉が落ちて飛び交う鳥たちを見つけやすくなったり、越冬のために日本に飛来してくる渡り鳥たちが水辺に集まってきたりするからなんだって。
真夏に汗をダラダラ流しながら歩き回った手賀沼、さぁ12月の景色はどんな感じかな?
みんなで行ってみよー!!!
ガラガラガラ・・・バタンっ!
出発は8時半前。
モビスケから外へ一歩出ると、さっそく駐車場の木の上で、スズメさんが元気に鳴いていた。
チュン!チュン!
「なぁんだ!うづめが来てること知って喜んでくれてるんじゃない?」
「すずチュン!チュンチュン!(すずちゃん、うれしい!)」
うちのうづめはまだあまりコトバは話せないんだ。チュン、とあとは朝のご挨拶の、おはーチュン。夜のご挨拶のおやチュンみ。あ、でもね、みんなの名前は呼べるようになってね、すずは、「すずチュン」って呼ばれてるよ。
道の駅しょうなんを起点にして、いざ出発!
手賀沼大橋を渡って手賀沼の北側、我孫子市側へ渡るよ。雲ひとつない真っ青な空、気持ちいいけれど、橋の上ではびぅぅぅと北風が吹き付けてくる。
「あ!カルガモさん!ン?コサギさんも飛んでる!おぉー。」
クルマやバスでこの橋を渡ったことはあるけれど、実は歩いて渡るのは今回が初めて。1kmくらいあるのかな?と見積もっていたけれど、実のところはそこまで長くはなかった。これまでなんとなく橋を行き来するのは避けていたけれど、歩道の幅もしっかり広いし、しかも橋桁の上からも水鳥たちを観察することができるから、これからはもっとこの橋を使って手賀沼の南北を行ったり来たりできるあなぁって気がついた。
【スズメ科 スズメ その1】
橋を渡り終えると我孫子高校を横目に、大きな交差点に出る。ココは何度も来たことのある場所だから、すず、もう土地勘あるよ。
「すず、今日は右へ行く?それとも左へ行く?」
リンくんに聞かれて、ふーむと一瞬考えたのちに、今日は、水の館のある方面へ行くことにした。
「みぎ!」
ぺっぽーぅぺっぽーぅぺっぽーぅぺっぽーぅ・・・
横断歩道では人工的な鳥さんの声が流れてくる。
トコトコトコトコ
無事に渡り終えると、そこにもチュン!がいた。
チュン!チュン!
「アハッ!スズメさん、独りぼっちで電線の上で鳴いてるなんてめずらしいね?普通はさ、木の上で数羽一緒にちょこまかちょこまか飛び回りながら鳴いてるでしょ?もしかしてこの横断歩道の音に反応してる?」
ぷっくり大きめなスズメさんが、横断歩道のすぐそばの電線の上で一羽、声高らかに鳴いていたのだった。」
「チュン!チュンチュン!(うづめもー!)」
うづめが嬉しそうにチュンチュンと続く。うづめは自分がスズメさんだって、ちゃんと理解しているみたいだった。
「うづ、オトモダチいて良かったねー?」
「チュン!(うん!)」
【セキレイ科 ハクセキレイ】
ヨットクラブのある小屋の横の駐車場では、十数人ほどのロードバイク乗りがたむろしていた。知り合い同士でツーリングなのか、複数台のクルマから自転車を運び出したりしている姿が目に入った。手賀沼の遊歩道は自転車乗りにも人気の場所なんだ。みんな思い思いの楽しみ方をしているこの手賀沼っていう場所が、すずはやっぱり好きだよ。
手賀沼親水広場の河童の噴水の前を通りがかると、鳥さんたちが集まってきていた。足元にはカルガモの親子がゆうゆうと泳いで、ハクセキレイさんがシッポをフリフリしながら歩いている。
「あ!今、ハクセキレイがふとももの上に乗ったよ!」
「どれどれ?アッ!ホントだー!アハッ!」
一番左の、片足を上げた河童のそのふとももの上にハクセキレイさんがピョコンと留まった。湖面は穏やかで、鳥さんたちは本当に気持ちが良さそうだ。
【シジュウカラ科 シジュウカラ】
一方で広場の桜の木々の間では、十羽以上ものシジュウカラさんがヒョイヒョイと遊び回っている。アッチコッチ行ったり来たり、下から上の方に登りながら木の枝をつついているようにも見える。葉っぱが全部落ちきっているから、動きがよく見えるとは本当だと思ったの。
ジジジジッジジジジッ
チチチチッチチチチッ
カメラを構えたリンくんは、無心でシジュウカラさんたちを追い回していた。
「冬は野鳥観察にいいって、ホントだねー。カメラのピントが合わせやすいもの。夏はさ、ただでさえ動き回るところへ葉っぱが生い茂っていて全然ピント合わせられなかった。今日はちょっとイケてるかも!」
「ホント?ちゃんと撮れてるの?」
「何枚かは撮れてるはず!」
【モズ科 モズ】
そんな話をしていたら、やはりハダカになった木のそのてっぺんで鳴きもせずにジィっとしている薄茶色の鳥さんを発見した。
「(小声)リンくん!!!コッチ!コッチ!ねぇ、鳥さん留まってるんだけど・・・あれ、なんだろ?」
お、と言ってカメラを向け直したリンくん。最大ズームにして様子をうかがってくれたよ。
「ンー。確証はないけれど・・・モズかな?」
「えーっ!モズさんって、あのモズさん!獲物を採って集めるってヤツでしょ。」
モズのはやにえ、のこと、すずね、野鳥の本でちょっとだけ読んだことがあったんだ。でもそのモズさんを実際に見るのは初めてだよ。
「まさかはやにえは・・・見えないなぁ。でもこれから獲物を取りに行くところなのかもね。」
上ばかり見上げていたら、リンくんのよりもずっと立派なカメラを持ったオジサマが後ろに立ってやはり上を見上げていた。
モズさんはどうやら人気みたいだよ。
【スズメ科 スズメ その2】
「釣り堀あたりまで行ってみよっか。」
そのまま遊歩道を天王台方面へ歩いていく。橋の上で感じたあの北風はいつしか止み、すっかりぽかぽかの小春日和だ。
沼と反対の山側は、刈り取られた田んぼを挟んで大きな農家の建物が見える。うちの新入りのスズメのうづめは、ここらで初めてのお外撮影にチャレンジしたよ。
「うづー、ハイ、チーズ!」
「チュン!チュン!」
自然いっぱいの中での初めてのお出かけ、初めてのお外撮影はちょっと緊張したかな?でもね、きっと大丈夫。この手賀沼なら、鳥さんはいぃぃぃぃっぱいいて、みんなうづめの味方だからね。
すると、やっぱりその通りだった。
チュン!チュンチュン!チュン!チュチュチュン!
「うわっ!スズメさんの群れだよー!大歓迎だね。」
沼側のヨシの間から、遊歩道の桜の木へと遊びにやってきたスズメさんの群れが、うづめの目の前で楽しげに舞っている。
いち、に、さん、し、ご
ろく、なな、はち、きゅう、じゅぅ・・・
全部で何羽いるかな?軽くざっと20羽くらいはいるかな。もっとかもしれない。
チュンチュン!チュチュン!
まるで、「うづめちゃーん、手賀沼へようこそ!遊ぼう!遊ぼう!」って言ってるみたいだ。
うづめはというと、ほっぺたをプクッとふくらませて、嬉しそうに笑っている。
「チュン!チュン!(わたしもまーぜてっ!)」
「あぁ、あぁ!うづ、大歓迎はうれしいけど、まだ飛べないでしょぅ?すずと一緒にいましょうね。ヨシヨシ。」
「チュン!チュン!すずチュン!チュン。(わかった!すずちゃんといっしょにいるね。)」
ホッ・・・。
すずが野鳥レポーターしてる間にうづめが迷子になっちゃったら困るもの。まだまだうづめからは目が離せないね。
【キジ科 キジ その1】
しばらくスズメさんを眺めていたら、目の前の草むらから、ガサガサッという音が聞こえた。
リンくんが、シーッというしぐさをして、一歩近づいた。
ガサガサッ・・・
「(小声)アッ!キジさんじゃない?」
キジさんといえば、真っ赤なアタマと紫や緑色のカラフルな羽毛が特徴の大型の鳥さん。春の田んぼや初夏の繁殖期のクワァーックワァーッっていう鳴き声でおなじみだよ。だけれど、実は、冬にキジさんを見るのは初めてかもしれなかった。
今回、冬の手賀沼に来てみてわかったのは、鳥さんって鳴いてばかりいるわけじゃないってこと。足音や羽の音、それから、自然に溶け込むその姿で見つけられることもあるんだって、知ったよ。
「しっかしこれは撮るの難しいわ・・・。草むらの影にいて、全然出てきてくれないからね。」
リンくんとジィーっと待ってみて、キジさんの姿をなんとか1枚カメラにおさめることができたよ。
【サギ科 アオサギ】
青空にはトンビさんがくるーりくるーりと旋回をしている。そのまま山側の林にふと目をやると、白っぽい物体が木の上にいるのを発見した。
じーじーじーじー・・・
リンくんが無言でカメラをズームした。
すると。
「ハッ!やはり!すず、アオサギさんだよぉ。アオサギさん、木の上に留まってる。」
「えーっ!アオサギオトコ?」
「あ、いやいや、アオサギオトコかはわからないけど、アオサギさんだぁねぇ。木の上にいるのって見たことないね。」
「うん!アオサギさんって、もっと開けた水辺でジィっと立ってることが多いよね?木の上は初めて見たね。」
「だねぇ。ぜんっぜん動かないし。」
すず、木の上のアオサギさんに、びっくりびっくりでSHOWぉぉぉぉぉっ!
アハッ!パタパタパタパタっ!
【カモ科 コブハクチョウ】
「そういえば、今日まだハクチョウさんに会ってないね。こないださ、11月にバードフェスで来たときにも会えなかったしね。なぜだか冬のほうが少ない?普通ハクチョウさんって、冬に来るんじゃなかったっけ・・・?」
リンくんがそんなことを言った瞬間、遊歩道と沼の湖面の間にある緑色のネットの向こうに白い影を発見したの。
「(小声)発見!発見!コブハクチョウさん、はっけーん!オォハヨォゴザイマァスーっ!」
すず、手賀沼といえば、コブハクチョウさんっていうイメージだから、ちょっと久しぶりに会えてうれしかったよ。
夏場に来ていた頃は、コブハクチョウさんが遊歩道を歩きまわったり芝生でシロツメクサを食べたりしていたけれど、今はどうやら沼の水辺で過ごす方が心地良いみたい。
「ほら、遊歩道からちょっと山側へ行ったら畑や田んぼでしょ?確か、地域の人たちが外来種のコブハクチョウさんたちと共存するために、畑や田んぼには入ってこないように対策をしているって聞いたよ。」
「そっか、手賀沼のほとりで暮らして繁殖しても、ニンゲンの生活とうまく調和できてどっちも困らないように過ごせるといいよね。」
【キジ科 キジ その2】
「さ。そろそろ戻ろっか。今日は電車じゃなくてモビスケ(クルマ)だから、駐車場まで戻らなくっちゃ。」
気がついたら、出発してからもう1時間半ほど経っていた。
水の館まで戻ってきて、直売所の野菜を眺めたりおトイレを借りたりして建物を出ると、アレ?なんだか空き地の上を歩いているものが目に入った。
「あーっ!キジさん、いたーぁ!」
「え?ドコドコ?わっホント。さっきは草むらの中で全然見えなかったけれど、コッチのコは随分堂々と歩いてるね。」
とはいえ、春や夏にみたキジさんは同じく田んぼや畑の端を堂々と姿を見せて歩いていたから、どちらかといえばコッチのほうがキジらしい気もする。
水の館の建物の横から木々の間をぬってカメラを向けるリンくん。
カシャカシャカシャ
午前10時前。
少しずつ高くなってきた優しい冬のお日さまの光に照らされるキジさんの羽毛は、まるで虹色に輝いていたよ。
「キラッキラしてキレー!キジさん、カッコいいねぇー!」
すず、初めての冬の手賀沼、何種類の鳥さんを見たかな・・・?って思い出してみるとね、
カルガモ、コサギ、スズメにハクセキレイ、シジュウカラに、それからモズ!
キジにアオサギに、コブハクチョウ、そしてキジ。
ざっと数えただけでも10種類の鳥さんに会えたの。
さぁ冬はまだ始まったばかり。
寒さ対策を万全にして、野鳥レポーター、これからも頑張るからねーっ!
「チュン!(うづもがんばります!)」
あ、うづめのことも、改めてどうぞよろしくね!
以上っ
すずちゃんの野鳥にびっくりでSHOW、第11回は「冬の手賀沼でオハヨォゴザイマァスーっ」でした。
まったお会いしましょーっ!
ばいばーい!
パタパタパタパタっ
すず(鈴之助)
「すずちゃんの野鳥にびっくりでSHOW – 第10回 鳥さんのお祭りジャパンバードフェスティバル」
https://bobingreen.com/2023/11/08/6870/