ウミガメさんと初めてのオーシャンブルー

すぅーぃすぅーぃ。

大小さまざま色とりどりのおさかなさんたちが暮らす水槽の中で、そのウミガメさんは、ゆったりと心地よさそうに泳いでる。

ココは市内にあるショッピングモールの一角。休憩所スペースの横に設置された小さな小さな”水族館”。

外は真夏の陽射しでとってもとっても暑いけど、ココはびっくりするくらいヒンヤリと涼しくて、とっても過ごしやすいの。

あ、わたし、アザラシのフク、鰒太郎(ふくたろう)と申します。まだこのボブ家に仲間入りして2ヶ月も経たない新参者なんですが、どうぞよろしくです。

そんなわたしに毎日毎日、ボブ家の皆さんはいろんなことを教えてくれるんだ。この”水族館”のこともね。近くにカッコいいウミガメさんがいるから会いに行こうよ、フクも海の生き物でしょ、きっと気に入ると思うよ、ってライオンのボブぞさんたちに誘われたの。

水槽の前に到着したのは、昼過ぎのこと。思いのほか人だかりができている。子供連れのママさんたちや、酷暑を避けてイスで休憩するおじいちゃんおばあちゃんに混じって、わたしは、リンくんに抱っこされて、そのキラキラするオーシャンブルー色の空間に近寄っていった。

実のところ、わたしはホンモノのオーシャンブルーはよくわからない。でも、いろんな設備を駆使して仕上げられたであろうこの”水族館”の青い色はキレイだと思った。

“キラキラするオーシャンブルー色の空間”

おそるおそる近づいてみると、そのウミガメさんは、ヌゥッとこちらに近寄ってきた。「ン?何だ?」とでもいいそうな様子で、偵察に来たという感じだ。

“「ン?何だ?」とでもいいそうな様子で、偵察に来た”

アっ・・・。

フク、ほら、こういうときは、ご挨拶だよ。しっかり。

ボブぞさんに言われて、あわてて姿勢を正す。

こんにちわーに。ふくたろうっていいます。フク、って呼んでください。アザラシです。よろしくね。・・・ウミガメさん、とってもキレイだね。

・・・ブォっ・・・。ヌゥ。

オーシャンブルーをヌルゥっとかきまわしながら、ウミガメさんはその身体をゆっくりと旋回させて、わたしのほうに顔を向けてくれた。

・・・・・。

ウミガメさんのコトバはわからなかった。何か言ったのかもしれないし、何も言っていないのかもしれなかった。そもそも、ウミガメさんもわたしのコトバはわかってないかもしれない。

でも、わたしが白くて丸いカラダをコロコロと揺らすたびに、ウミガメさんも一緒に動いてくれた。

フク、たぶん、ウミガメさん、フクのことわかってるよ。フクが動くたびに、ウミガメさん追ってきてるよ。フクのこと見えてるんだねぇ。

“わたしが白くて丸いカラダをコロコロと揺らすたびに、ウミガメさんも一緒に動いてくれる”

リンくんにそう言われて、はたと気がついた。

わたし、エサじゃないですぅ・・・!

時刻は13時。この水槽のエサやりの時間がちょうど開始したところだった。他のおさかなさんたちは速攻でエサに群がっている。

ウミガメさん、今後ともよろしくです!また来るねっ!フクだよ、アザラシだよ。オトモダチだからね、エサじゃないからね!

ジィッ・・・。

“ジィッ・・・”

最後の最後まで、物珍しそうにこちらを見つめてきたので、ちょっとビビってしまった。

わたしは、初対面の挨拶もソコソコに、”水族館”を後にした。

ねぇリンくん。エサやりの時間だったんだね。どぉりで見物のニンゲンがいっぱいいたわけだよね。

ウミガメさん、ニンゲンは見飽きたから、見物に来たアザラシが珍しかっただけなんじゃないの?白くてまるまるとしてさ。かわいいなーオトモダチかなー?ってきっと思ってくれたよ。大丈夫だよ、フク。

いつだって、リンくんのコトバにはなんの説得力もない。ないのだけど、わたしの「初めて」は毎日毎日ひとつずつ積み重なっていて、今日のウミガメさんとのできごとも、なにかコトバにしておけばいいのかなと思って、そう思ったら、なんだか勇気がわいてくる気がした。

ウミガメさん、キレイだった。

フク、ここ好きになったよ。また来たいな。

おーいつでもいいぞ、ここはなんて言ったって入場無料の”水族館”だからな!

さ。おれらもハラ減ったな。おうち帰って、昼メシ食べて、みんなで昼寝しようぜ。

ケンイツエンチョーがそう言いながら、わたしのまぁるいアタマをポンポンしてくれた。

よかったな、フク。そう言われてる気がした。

帰り道のバスのなか、わたしはあのオーシャンブルー色の空間で自分が泳いでるような心地がしたことを思い出して、カラダを揺すってみた。

コロコロ。コロコロ。

フク(鰒太郎)

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Rin(リン)

ぬいぐるみブロガー、Rin(リン)です。 ライオンのボブ家と愉快な仲間たち、そしてニンゲンのケンイツ園長と一緒に、みどりキャンプ場で暮らしています。 ボブ家の日常を、彼らの視点でつづっていきます。

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