リンくん「絵を描く」! 第9回 & 第10回 — 四季を描くということ
オトモダチのみなさん、こんにちわーに!
おっす!オラ、パブロヲ!
リンくん「絵を描く」!のこのシリーズ。
いつも通り、NHK Eテレの「3か月でマスターする 絵を描く」の放送(2025年4~6月放送。2025年8月現在、既に番組は終了)とその番組のテキストを参考に、うちのお絵描き初心者リンくんがアクリル絵の具を使って課題に取り組むよ。
今日は全12回のうち、第9回と第10回の課題をまとめて紹介!
どちらも風景画なんだけど、春をテーマにしたものと、冬をテーマにしたものの2枚を描いてみるのだ。
さぁー絵筆を持ったら、肩をリラーックスして、笑顔で楽しもう!
第9回 春の色彩マジック!~名画に学ぶ風景画~
「ふぅむ。この先生のお手本を見る限り、かなりレベルが高いよねーぇ?すっごくキレイだけど、すっごく難しそうだ・・・。」
膝の上にのせたテキストをまじまじと眺めながら、いつも以上にガックシしてるリンくん。おいおい、描き始める前からそんなテンションでダイジョブ?
「見てよ、この桜の木!なんかちゃんと風を感じる・・・。こんなの描けるかな・・・。」
「リンぐーん。それが課題なんだからさ、まぁいいじゃん!気楽にやってこーぜ?な?」
オラはそう言って、ホラ、とリンくんに鉛筆を手渡した。
「うーん。うん。」
多分だけど。リンくん、これまで8回、柴崎春通先生の出す課題に取り組んできて、ちょいと絵が描けるような気になってきたから、欲が出てきたんだと思う。うまく描きたい、とか、失敗したくない、とかね。
ハッキリいって、そんなの無理無理!小中学校で美術を習ったきりのド素人が、初めてこうやって(テレビ番組を通じてだけれど)絵を習ってるわけでしょ?とにかく、描けばいいの、楽しめばいいじゃん!
「わぁった。描いてみる。」
今回のテーマは、春の色彩。桜の頃の京都嵐山の風景写真をもとに描いてみるんだって。
まずは下絵。前回の街並みの課題のときのような「ショーシツテン(消失点)」なんていうコトバは出てこないけれど、やはりどこに目の高さがあるのか、ということは意識しなくちゃいけない。
スススーッと横線を引き目の高さを決めたら、奥の山、手前の山、それから橋、遊歩道、メインの桜並木の位置を、ざざざーっと決めた。
「ふむ。下絵は前回の街並みより全然難しくないぞ。」
「オッケー。んじゃぁ、ホラ、絵筆持って。春の景色だよ、楽しく朗らかに、あったかいキモチでね?」
オラは、春の絵に必要な絵の具をニョロニョロとパレットに出すお手伝いをしてやった。すっかりアシスタントみたいになってる?いやいや、オラは我がオハナ学園ゲージュツガクブ(芸術学部)の部長なのだぞ!指導する立場なので、まぁ、甘やかしちゃいけないけれど、サポートしてやるのも悪くないかな。
「うん、明るく、楽しく、朗らかなキモチで。」
その通り、テキストによれば、今回の課題は、印象派で有名なクロード・モネを参考に、「明るく柔らかな色づかい」(p.98)で描いてみよう、というアドバイスがされている。「細部ではなく色や光」を「丁寧に描く」(同)のだそうだ。
「それって、これまでの課題でも説明されてたよね。遠くは細かく描かなくて良くて、ココにこんなものがある・・・かな?と思わせる程度でいいって。」
つまりそれって、写実的に描くことは捨てて、色や光で空気感を表現するっていうことなんだ。いいぞ、リンくん、アタマではちょっとずつ理解が深まってる。
遠くの空と山をぼんやりと白をたくさん混ぜた色で描く。第4回の「奥行きのある景色」課題の復習だ。そして、だんだんと手前に来れば来るほど、ハッキリとした色で描いてゆく。橋、幅広の川、そして遊歩道。単調にならないように、時折派手な色も重ねてみちゃうなんてこともする。
「そして・・・いよいよ桜の花ですよ・・・。」
テキストによれば、暗いところを紫で描き、明るいところは淡いピンク、それから白で重ねてゆくとあるが・・・。こんれが難しい!
「うーん!重ねても重ねても、遠近感がないというか立体感が出ないというか・・・?桜の花って、遠くから見るとモコモコしてるよね、そのモコモコがうまく出ないねぇ・・・。」
「ホォラ、リンくん。今日は随分小難しいカオしてるよ。ダメダメ。スマーイル!ね?山ノ内すずちゃんと柴崎先生がいつも言ってるでしょ?『絵は、楽しい!』って。」
「あぁゴメン・・・!そうだった。うーん、、、えーい!もっと桜の花びらいっぱい散らしちゃえー!」
口角を上げて再度絵筆を握ったリンくん、思うがままに花を散らし始めた。テキストの先生のお手本はもっと繊細な雰囲気だけれど、リンくんの絵の桜は目いっぱい手を広げたような、豪快な並木になった。
「というわけで、完成した作品がコチラです。」
どーん!
約4時間ほど。遊歩道の明るいオレンジ色や川の水に黄色や赤が入っているのは、テキストにのっている先生のお手本を真似たもの。リンくんが自分で生み出せるわけはないアイディアだよね。
でも、そのおかげもあって、一応、遠近感は表現できているんじゃないかな?白っぽい遠い山と鮮やかな手前の景色。その間にうっすらとかかる嵐山の渡月橋。
「オラ、こんな桜満開の下をお散歩できたらうれしいだろうなー!」
「ホント?そっか、それは良かった。」
「リンくん、今日の自分の作品には満足してないの?」
「うーん、やりきった感はあるんだけど、桜の花びらの雰囲気が、やっぱり思っていた感じと違うんだよねー。わたしの脳内桜並木はこうじゃない!と言っている。」
「なァにを偉そうに!アハッ!!!」
「あはははは。失礼しました!」
苦戦したけれど、最後は笑ってしめくくり。
そう、だって、「絵は楽しい」のだから!
第10回 冬景色の秘密!~名画に学ぶ明暗と色彩~
春の景色の次は、冬の景色にチャレンジするんだって。
モチロン2作品を同時に描く集中力はないから、別の日に取り組んだよ。
「えーと、なになに?冬の景色は、ブリューゲルを参考にするって?」
「ブリューゲル?えーっと、どなたでしたっけ・・・。」
テキストによれば、ピーテル・ブリューゲルとは16世紀頃の画家さんらしい。簡単に言えば、モネよりもずっと前の、300年くらい前、日本がまだ戦国時代の頃の画家さんのようだ。(p.104)
「うーん、知らなかった。」
冬の自然の景色を、全体的に「ブルーグレーの世界観」で表していて、参考となって掲載されている作品『雪中の狩人』(1565年 油彩)は、遠景の山から、近景の狩人と犬たちを上から見下ろす独特の視点(目の高さ)で描かれていると感じる。
先生の解説によれば、「過酷な季節を描いていても見る人をほっとさせ」る「暖かみのある作品」とのことだ。冬の自然のなかで人間の生きる姿を描くことで人々のぬくもりを感じるとることができるそうだ。
「ほうー。」
んじゃ、やってみますか!
お題は、日本が誇る冬景色の定番、世界遺産になっている白川郷だよ。
下絵を書くために鉛筆を手にしたリンくんだけれど・・・ひゃぁ!もう消しゴムを手にしてる!
「うぅー!こりゃぁ難しいぞ!出た!建物!アレだ、”ショーシツテン(消失点)”。」
白川郷独特の合掌造りの屋根の角度、窓や戸の角度が、それっぽくならないのだという。
「む?そうか、そもそも目の高さ間違ってた・・・。」
ブツブツとつぶやきながらまたしても消しゴムで全消ししていく。
サンプル写真をよく見ると、建物が大きいからついつい見上げるように描いてしまっていたけれど、実際の目の高さはニンゲンの背の高さと同じところにあることがわかった。
「先生の下絵のお手本がなかったらずっと間違ってたかも。」
建物が三棟、それから奥には雪をかぶった林。雪が降りしきっているから、空には何も見えない。
「ふぅ。とりあえず下絵は描けた。」
「先生のお手本を見る限りはこんなに寒色っぽい絵だけれど、やっぱり赤や黄色も使うんだねぇ。」
今回の課題では、サンプル写真通りのどんよりとしたグレーの空を描くのではなくて、ブリューゲルっぽいブルーグレーの色で塗っていくのだそうだ。写実的であることよりも、もっと絵は自由に表現を楽しんでいい、と力説する柴崎先生の指導はとても心強いと思える。
正解は自分の中にあるんだよ、といってくれているような気がする。お絵描き初心者が、自分の楽しみのためだけに描いている絵ならばなおさらそうだよね。
いい感じのブルーグレーを探すべく、パレットの上で絵の具をぐちゃぐちゃと混ぜていく。
この作業はぜったいにパソコンやタブレットのお絵描きソフトでは味わえない楽しさがある。RGBの色配列で何番、と打ち込めばいつだって同じ色が再現できるようなデジタル世界とは違う。
それはそれでとても便利だし活用もしているけれど、いまやりたいのは、アナログで、絵筆で絵の具を混ぜることなんだ。
自分のイメージする、好きな色味を作るべく、こうやって試行錯誤しているこの瞬間がアナログ絵の楽しさのひとつなんじゃないかとも思う。
「お!それ、オラが好きな色!」
リンくんは混ぜ混ぜしたブルーグレーの海を白いキャンバスの空に塗りひろげた。
シャッシャッ・・・シャッシャッ・・・
「あ、水足りない、チョイチョイ、っと。」
シャッシャッ・・・シャッシャッ・・・
「おぉっと色変わった、あ、まいっか!ちょい黄色み強めて・・・。」
そう。そういうこと。
そうして、ニッポンの白川郷の空は、16世紀のヨーロッパの画家ブリューゲルが描いたような冬のブルーグレー色に染まった。
「コレが、絵は自由でいいっていうことなのかー!」
まだ空しか塗っていないのに、リンくんは妙に納得した表情で、口元は緩んでいた。
「楽しいね?」
「うん、楽しい。」
そこから・・・合掌造りの建物や木々を描いてゆく。雪景色ということもあって、どんどん白の絵の具がなくなってゆく。
空想の人物も描き入れて、そのあと。
「最後の仕上げだよぉー。」
「え?なになに?」
「番組でさ、やってたじゃん?雪を降らせるって。白い絵の具を含ませた筆を指で弾いてキャンバスに飛ばす方法。」
「あー!アレね!おうおう!」
仕上げの工程で、柴崎先生のいう「遊び心」を加える。まるで雪が降っているように見せるテクニックとして、筆の使い方を変えるというもの。
パシュッ・・・!
「うわぁ!結構雪降るね?」
もいっちょ・・・パシュッ・・・!
やり始めると面白くなって止まらない。
パシュッ・・・!パシュッ・・・!
「リンくーん、先生、やり過ぎは禁物って言ってたよ!」
「あっ、そっか!」
というわけで、最後の最後、思う存分絵筆で遊んで、完成したよ!
どーん!
「うんうん。冬っぽい雰囲気、出てるよ。このブルーグレー色の空は、絵の具の混合で試行錯誤した甲斐もあって、いい感じだねー。オラ、好きだぞ。」
「えへへ。パブロヲ、ありがとー!」
「春と冬の景色を描いてみて、それぞれの色味や雰囲気を捉えることができたっぽいね?」
「うんうん。そだねー。夏や秋はまたポイントがありそうだよね、課題が終わったらまたチャレンジしてみよう!」
さぁ!今回もリンくん「絵を描く」!、よく頑張りました。
いよいよ残すところはあと2回だよ。お楽しみにねー!
以上、ゲージュツガクブ(芸術学部)部長、パブロヲでしたっ!
パブロヲ
▼3か月でマスターする 絵を描く Eテレ 番組ホームページ▼
https://www.nhk.jp/p/3months-ewokaku/ts/XK15MY1YJG/
▼テキストはコチラ▼
▼番組で講師を務めていた 柴崎春道 先生 公式ホームページ▼
https://www.watercolorbyshibasaki.com
▼リンくん「絵を描く」!アーカイブはコチラ▼
「リンくん『絵を描く』!(第1回 & 第2回)」
https://bobingreen.com/2025/04/28/13524/
「リンくん『絵を描く』!(第3回)」
https://bobingreen.com/2025/05/12/13675/
「リンくん『絵を描く』!(第4回 & 第5回)」
https://bobingreen.com/2025/06/13/14188/
「リンくん『絵を描く』!(第6回)」
https://bobingreen.com/2025/06/17/14302/
「リンくん『絵を描く』!第7回 — “ウモー”と”イッキュー”」
https://bobingreen.com/2025/07/08/14709/
「リンくん『絵を描く』!第8回 ー “Ctrl+Z”のない世界」
https://bobingreen.com/2025/07/29/15261/
▼パブロヲの名前の由来のお話はコチラ▼
「命名パブロヲ – 『コート・ダジュール』に憧れて」
https://bobingreen.com/2024/02/22/8316/