「くまくん!くまくん!くまくんくん!」 – ライオンボブ家、オトモダチに会いに海が見える町へゆく その1
あぁ・・・楽しかったなぁ・・・!ホント、ココロからはしゃいだなぁ・・・!
「おっかえりぃぃぃぃぃー!!!」
おれらがヘトヘトになって玄関のドアを開けると、気持ちいいくらいの大きな声が、まるで混声合唱のように響いた。
居間のソファの上では、すずフクやハンペン、もっつにハチまる、その他のオハナたちが、おれらの帰りをみんなで待っていて、キャッキャッと最高潮のテンションでお出迎えしてくれる。
おれはその大歓迎ぶりに負けじと「おぉ、おぉ!ただいまー!」と頑張ってチカラを振り絞ってみたのだけれど、実は、もう横になりたい気分。
それくらい、全力で遊びきった2日間だった。
なんとか台所の水道でシャコシャコと手を洗うと(ライオンだって外から帰ったら手ぐらい洗うのさ)、おれは、ひんやりとした手のひらをほっぺたに当てた。
心地よい脱力感から急に睡魔に襲われて、すぐにグゥと眠ってしまった。
オトモダチの”くまくん”にLINEをする
みなさん、こんにちわーに。
ライオンのボブおです。
おれね、1泊2日で、おれは妹のボブこと弟のボブぞを連れて、オトモダチに会いに行ってきたんだ。
チーバの我が家から2時間くらいのところにあるカナガーワ(神奈川県)の海が見える町で暮らすオトモダチでね、お名前を”くまくん”、っていうの。
クマのくまくん。クマさんだから、くまくん。茶色くてモフモフしてておっきい、クマさんなの。
“ねぇねぇ、突然なんだけど、5月のさぁGW明けてから○×日あたり、くまくんに会いに行ってもいい?”
おれがくまくんにLINEで連絡を取ったのは、まだソメイヨシノが開花する前、3月の春分の日のことだった。
“いいよー。じゃぁさ、えきまでうちのおばさんがおむかえにいくっていうから、わがやにあそびにきてよ”
ソッコーでいいお返事をくれたくまくん。ニンゲン同士がやってるTwitter・・・じゃないか、Xではもう何年もの仲だけれど、実際に会うのははじめましてなんだ。
おれらがドコのライオンの骨ともつかないだろうに、果たしておうちにお邪魔しちゃっていいのかな?
“エッ!いいの?”
“うん。おれね、からだがおっきいからね。おそとよりも、おうちであうほうがいいの。だから、きて!きて!”
“おっけー!行く!行きたい!よろしくお願いしますなのっ”
くまくんは、くまくんらしく、くまくんみが溢れる文面で、おれのことを歓迎してくれた。
「なーなーリンくん。あのな、今くまくんにLINEしたら、5月におれら会うことになったぞ。くまくんのおうちにお招きしてくれるんだって。細かいことはさぁ、あと、ニンゲン同士でやってくんない?」
そう言って、おれはスマホをリンくんに手渡した。するとリンくんは、俗に言う豆鉄砲を喰らったような顔をしておれを見返して、それから、おれとくまくんとのLINE履歴をスクロールした。
「へ?アッ!えっ?そーなの?っていうかボブお、LINEできるんだっけ?あー・・・うん、わかった!じゃー、こーたろーさんと連絡とるわ。」
ふん、ライオンだってLINEくらいできるわい。だって、おれ、ガジェット好きだし、ニンゲンのコトバも得意だしね。だけどさ、細かい調整ごとはニンゲンのほうが慣れてるでしょ、だからそういうのはリンくんに任せるんだ。
あ、そうそう。くまくんちの”おばさん”ことニンゲンのお名前は、”こーたろー“さんという。うちのリンくんは、そのあとこーたろーさんと詳細の日程を相談しーの、約1ヶ月半後の約束を取り付けて、おれらはついに対面を果たせることになったのだった。
待ち合わせは、ずし!ずしずし!
待ちに待った日。
朝からおれらはソワソワして、早く目が覚めちゃったの。
今回くまくんに会いに行くメンバーは3人。妹のボブこと、弟のボブぞ、それからおれ、ボブお。我が家のオハナ(家族)全員で相談をして(通称、オハナ会議と呼んでいる)、ボブ家ライオン三兄弟3人で会いに行こうってことになった。
本来ならお出かけしたがり遊びたがりのコたちも、今回はぐっとガマン。リンくんひとりじゃぁ連れて歩ける人数に限りがあるから、泣く泣く、あきらめてもらった。
逗子駅に10時頃、という約束で、横浜駅から横須賀線に乗り込んだおれら。せっかくだから、とガラガラの先頭車両に乗ると、運転手さんの動きが見える位置に席を取る。
30分ちょっとの電車旅。ガタンゴトンと揺れるその振動さえも楽しくて、でも、はじめましての瞬間を目前に控える緊張感もあって、なんだかとっても特別な時間だった。
隣に座るリンくんは、スマホでこーたろーさんと連絡を取り合っているみたい。何分に着きそう、だの、何番線に着く、だの、あーだこーだやっていて、やっぱり落ち着かない。
北鎌倉駅で大勢の高校生が下車して、鎌倉駅でも観光客っぽい人たちが降り、ついにこの車両はおれらだけになった。と思ったのも束の間、すぐに目的地に到着した。
「あっ!とーちゃーく!降りるよ!」
リンくんに抱きかかえられておれらは電車を降りる。久里浜までゆく15両の最後までを見送ると、おれらは改めて、ホームの看板を眺めた。
“ずし”。
「おおー!おれら、ついに”ずし”に着いたぞ!」
「わーいわーい!ずし、ずしずし!アハッ!ニーちゃーん!ネーちゃぁん!はやくーぅ!」
ボブぞが先を急ごうと走ってゆく。
少し前までだったら、内弁慶のボブぞのことだから、今頃おれとボブこの背中に隠れてドキドキしてうつむいていたに違いない。けれど、最近おニーさんになってきたからか、初対面のオトモダチに会うのも平気になったみたいで、むしろ先頭を切って頼もしい。
兄としてはそんなボブぞの成長がとてもうれしい。オトモダチに早く会いたいが一心に駆けてゆくその背中を見やりつつ、その一方で、荷物が多くてあれやこれやと手間取るリンくんの面倒をみて、ようやくピピッと自動改札を抜けた。
晴天の逗子駅前。ロータリーで待ち合わせとのことだったけれど、改札出口すぐのところで、満面の笑みで手を降っているニンゲンがいた。
それがくまくんちの”おばさん”こと、こーたろーさんであることは、一目瞭然だった。
「きゃーっ!きゃーっ!わーわー!ようやく会えたぁぁぁぁ!やったやったー!」
うちのリンくん、こーたろーさん、どっちの”おばさん”が声を発してるのかわからないが、逗子駅の改札出口で叫び合うニンゲンふたり。
おれはリンくんに抱っこされて「ハァイ」なんて優雅に手を振っていたつもりだったのだけれど・・・、気が付くと、こーたろーさんの胸の中にいた。
「うわぁー!カラフルライオンちゃぁぁぁぁん!」
「あっあっ?!おれ、ボブおって言います。今日はよろしくお願いしますなの!」
「うんうん、あ、うちではねぇ、ボブ家のみんなのこと、”カラフルライオンちゃん”って呼んでるのよぉ。君が長男のボブおくんかぁ、フムフム。よろしくね。」
こーたろーさんはおれの顔をまじまじと見て、それからもう一回ぎゅぅっと胸に押し当てておれのことをきつく抱きしめた。
「ハイッ!よろしくお願いしますなの。妹と弟も一緒に来てます。あとで紹介するね。」
おれ、リンくんとケンイツエンチョー以外のニンゲンに会うの久しぶりだし、こんなに全面的な愛をもらって、なんだか小っ恥ずかしいキモチとうれしいキモチがぐちゃぐちゃなの。
くまくんたちと感激の対面を果たす
そそくさと促され、近くに停車していた”ちょろQ”ことこーたろーさんの愛車へ移動する。
「んじゃ、リンさんは助手席ね。んで、みんなはー・・・」
こーたろーさんが言いかけたところで、リンくんが驚きの声を上げた。
「わ!みんなもお迎え来てくれたの?嬉しい嬉しい嬉しいー!」
後部座席を見やると、こーたろーさんちの家族たちが満面の笑みで座っていた。
その瞬間はね、おれはリンくんの抱きかかえるトートバッグの中に入っていたから、一歩反応が遅れてしまったんだよね。リンくんの声を聞いて、急いで顔を出す。
すると。
「やっほー!ぼぶおくん!ようこそ!」
「え!あ!くまくん!くまくん!くまくんくん!くーまーくーーーーーーぅん!くまくんだー!!!」
それが、くまくんとおれとの初対面だった。
くまくんは、リンくんがやってるTwitter・・・じゃないやXの画像で見ていたとおりの、くまくんらしい、くまくんだった。大きな包容力のあるスマイルくまくんのままの、100%のくまくんだった。でーんと放り出された両足の肉球も、そのまんまだった。おれが会いたかった、くまくんそのものだった。
くまくんの前ではおれらはただのちびっこライオンだ。はやくくまくんとハグしたいキモチを抑えて、抑えて、なんとか抑え込んで、おれはおとなしく隣に座った。
くまくんはシートベルトをしっかりと締めていて、その周りをくまくんの家族が取り巻いていた。みんなおれらを歓迎しに一緒にやってきてくれたんだってさ!うれしいね、うれしいね!
「えっとねーぇ、右から・・・このコがぴ~ちゃんで、がびちゃんでしょー、んで、トリートで、ちょろぴーね!」
順番に、こーたろーさんが紹介してくれる。スヌが3人、それからワンちゃん(スヌもワンちゃんだけど)。ずっと画像で見ていたから、なんとなくは見分けがつく。でも、初めてリアルで会ってみると、ぴ~ちゃんは思っていた以上にカラダが大きかったし、がびちゃんは、ほんとに貫禄があって、それから、ガビガビしていた。
「あ、おれらもご挨拶を。えっと、右から、妹のボブこ、弟で末っ子のボブぞ、んで、おれはボブおです。ボブことボブぞは双子なんだ。そっくりだから見分けつくかなぁ?改めまして、どうぞよろしくね!」
「よぉろしくねーぇ!」
くまくんがのんびりした大きな声で、おれらに微笑みかけてくれた。
ブルルン
おれらが自己紹介し合っている間に、こーたろーさんが”ちょろQ”のエンジンをかけた。
「さっ。自己紹介も済んだところでぇー、ちょっと逗子をドライブしよっかぁ!天気良くて良かったねー!ただねぇ、今日は富士山は見えないかもしれないんだけどねぇ。」
「行きましょー行きましょ!披露山公園ですよね。いつもこーたろーさんが写真撮ってるところ。」
「そそ。んじゃ、レッツゴー!」
おれらは”ちょろQ”に乗って、逗子駅のロータリーを出発した。
くまくんたちとおんなじ空間にいる不思議。
あぁ、会いに来られて、ホント良かった!
無事に待ち合わせできたことに感謝して、ホッとする。
「くまくん!くまくん!くまくんくん!」
「なぁに?カラフルライオンちゃーん?」
「いいけど、おれはボブおね。カラフルライオンだと3人ともカラフルなんだよぉ。」
「あ、そうだったぁ、いつもおばさんがカラフルライオンちゃんってよんでたからさぁ、くせがぬけなくってね。」
アハハハっ!
時刻はちょうど午前10時きっかり。
逗子市街を快走する”ちょろQ”の車内は、笑い声に満ちている。
くまくん御一行と”カラフルライオン”ボブ家三兄弟の楽しいイチニチはまだ始まったばかり。
(その2 につづく)
ボブお
「行くぜッ!”あぶないライオン” in ヨコハーマ – 映画『帰ってきた あぶない刑事』を観にいく」
https://bobingreen.com/2024/08/26/10125/