帰ってきたイーさん
今日は1月3日。三が日というやつのみっかめだ。
てれぴではわかいほっそい兄さんたちが必死な形相で走る日だ。
数日さかのぼる。
大晦日には、ケンイツが作った白菜と豚肉のお鍋をわしわし食べながら、ジョジョを見たりゴローちゃんの特番を見たりして過ごした。そんでカウントダウンの15分前くらいに、冷たいお蕎麦をずるっとしながら、ごーん、ごいーんってテレビからお寺やら神社の映像を見ながら、おっとっといそげって、みんなで年越しじゃーんぷ!した。おれたち、新年の瞬間、地上にいなかったー!わふー!ことしもよろしく、ちうーって、オハナみんなでちっすした。
みんなって?
ケンイツとリンくんと、ニーちゃんと、ネーちゃんと、ゴロオ、シジマル、勘九郎とおで。アフラックおじさんとハチとかえるくんはジャンプはしなかったけど、一緒にいる。
それと、イーさんも見守っててくれてる。
みどりの家の、アフラックおじさんの座っている横に、小さな箱がおいてある。箱、といっても、使い込まれた、青い色のふたのついたタッパーだ。下にはニーちゃんが以前使っていた正装用のバンダナが敷いてある。
要は、特別な箱なのだ。
その箱の中には半分くらいまで土がはいっていて、その中に、ちいさなイーさんが眠っている。眠りについてから、すでに半年以上が経っている。もしかすると、旅路の途中かね、いまどのあたりかね、なんて、話すことがあった。
この半年くらい、緑と桜を行ったり来たりするときにはこの箱も一緒だ。イーさんは生前、水槽のなかに暮らしていたから、一緒におでまめができなくていつも留守番だったから、もうさみし思いはさせないように、って、そうしてきた。ケンイツの愛車、ぽくすたーくんのなかで、リンくんのおまたのあいだでキュっと固定されて、毎回ドライブしてきた。
そのイーさんの青い箱が、今日からしばらくずっとミドリに置かれることになった。
今朝は珍しく早起きだったケンイツとリンくんとが、ジョギング行ってくるね、といって、出かけて行った。いつもジョギングの帰りには、買い物をして両手に袋をかかえて帰ってくる。その中身は、激安ねぎとろ巻きやら鮭のハラス焼きなんかのスーパーのお惣菜類のときもあれば、豚肉、白菜、大根、豆腐、納豆、だったりもする。らっきょうだったりカニカマが入っていたりする時もあって、スーパーをうろうろしながら、あれこれ楽しく選んでくるらしい。そして、大量のおビーと泡の瓶。
今日は食べ物飲み物の袋とは別に、洋服の入った袋も持って帰ってきた。ああ、リンくんがまた服ゲットしたんだなって、おではすぐピンときちゃったもんね。リンくんは初心者ライオンでどうぶつのくせに洋服を見るのが好きで、特に古着屋を見つけると、アタシにぴったりん、といって買ってしまうのだ。今日は何かったんだろな、ライオンのくせに、初心者のくせに。生意気だよな。
そんなことをぽんやり考えていたら、急に飛び出してきたちいさなヤツがいた。
そいつはリンくんが描いた、陸海空を自由に旅するイーさんの絵のキャンバスから、勢いよく飛び出してきた。
「パヒュっ。」
「おおおおおお!わふわふわふわふっ!」
テレピの前で、はらへったよー、まだかなーってダラダラしてたのに、ニーちゃんもネーちゃんもおでも、びびった!
「よ。」
「あー!イーさん。おかえりだ!」
「よ。パヒュ。」
「うんうん。パヒュ。どしたの?旅、やめたの?」
「パヒュ。」
そっか、ひとしきり旅しようとおもったけど、独りでの旅はさみしいって気が付いて、オハナのみんなと過ごしたいって思ったんだね。ありがとう。よく、帰ってきてくれたね。7ヶ月ぶりだね。
おかえり、イーさん。
これからも仲良く、ずっと一緒に暮らそう。
改めてよろしくね。
ボブぞ
(2019.1.19)