ボブ蔵の睨み
んーんんっ!
ひとつ大きく伸びをする。
ボブぞです。
晩秋の好天。
遅い朝日が昇る前に目が覚めて、身支度をささと済ませて、すがすがしい気持ちで、家を出た。本当はバスに乗るところを、朝の空気がひんやり気持ちよくて、駅までテクテク歩いて。通勤客と旅客の混じる電車に揺られて、やってきたよ。
午前7時半過ぎ。ここは成田山。紅葉の見頃を迎えた新勝寺にお参り散歩しに来たよ。
京成成田駅の改札を抜けて。朝の参道は閉じられた世界で静けさに包まれている・・・、のかと思ってたんだけど、実際には全然違ったの。高校生、そう、成田高校の生徒たちがわらわらと通学している。そっか、土曜日だから授業があるのか。シャッターを開けて掃除と開店準備をはじめたお土産物屋さんもある。
かと思ったら、びっくりするくらいのスピードで車が坂を駆け下っていく。狭い一方通行の参道、朝の通勤なのかなぁ?
おではのんびりと歩きたいし、リンくんは不注意だから、なかなかに危なっかしい。
この参道には有名な鰻屋さんが何軒かあるのだけれど、その軒先には、ビニール袋に入った大量の鰻たち。こんなに朝早くからたくさんの職人さんたちが、その一匹一匹がすごいスピードでさばいて、串にさしていっている。ふと視線をあげると、たくさんののぼりが立っていた。「紅葉まつり」。そっか、今日はこれから参拝客がじゃんじゃん押し寄せるってことだね。
全部ひっくるめて、朝の音だ。人の足音、モノがこすれる音、車のエンジン音、活気のある街の音がする。1000年以上も前に開山したというこの成田山。この歴史ある参道を、一歩一歩ゆっくりと歩みを進める。
なぁなぁ、リンくん、この参道歩いたことある、ライオンっているかな?
いやー、こんなに派手でかわいらしいライオンさんはいないかもねぇ!みんな、すごいねぇ。
えっへへ。おでら、成田山の参道を歩くライオーン!
うふふ、うふふ。そんな話をしながら、山門に到着した。「成田山」の文字に、圧倒的な構えの大きな門。
さ。行こうか。
あー待って待って!
(・・・ジロリ)
「ひとつ睨んでご覧にいれましょうー!」
いよぉっ!ナリタヤっ!
おで、イチカワボブぞうでっす。でへっ!
・・・あっ、おでのことみんな見てる・・・!ハズカしい・・・。
だって、新勝寺の門前で睨みをきかせるライオンなんていないからねぇ。
でへっ。
じゃ、改めて、お参りしに行こう。
うん!
まだ人がまばらな境内を、ゆっくりと歩みを進めてご挨拶なの。
特に成田山公園では、上を見上げても、足元を見ても、秋真っ盛り。黄色や赤に色づきはじめた木々に、枯れ葉とキノコとどんぐりの競演、さまざまな晩秋のしるしを楽しんだよ。
リンくんが急に立ち止まった。目の前には、七五三参りの看板。
そういえば、ボブぞ、6才だよね?ってことは数えでは7才だね。七五三じゃない?
えへへ、えへへ。ライオンの7才はずいぶんオトナなような気もするけれど。でもお祝いしてくれるなら、うれしいな。
とっても広い新勝寺境内。おでらの本当の目的地は、出世稲荷神社っていうところなの。難しいことはよくわからないのだけれど、お寺のなかに神社があるんだよ。狐さまがお祀りされていて、油揚げをお供えするの。出世、つまり、”世に出る”、ことを見守ってくれる神さまなんだ。おでらがここに来るのは2度目。初めてこの神さまにお会いしてからというもの、これまで以上にとっても楽しく充実した日々を過ごしているの。だから今日はお礼参りでもあり、これからもよろしくお願いしますのお願いのお参りなの。
これまで、お友達がたくさんできました。お見守りくださり、ありがとうございます。無事に6才(数えの7才)にもなりました。
これからも、おで、いろんなこといっぱい楽しく頑張りたいと思います。よろしくおねがいします。
ボブぞ